1. 夫の不倫が発覚した場合に取るべき行動・対応策とは?
夫の不倫が発覚した場合に取るべき行動・対応策とは?
夫の不倫が発覚した場合に取るべき行動・対応策とは?

夫の不倫で妻が取るべき選択肢と慰謝料請求についての紹介

結婚した二人には配偶者以外の異性と性交渉をしないという貞操義務が課せられています。この義務に違反する不倫は不貞行為として慰謝料の対象になります。

しかし、夫の不倫を知った妻はどのような行動を取ればよいのか、すぐには判断できるものではありません。また、どのような行動が正解というものもありません。

そこで今回は3つの選択肢を挙げ、夫の不倫で悩んでいる方が自分に合った最善の道を選べるよう、さまざまな角度から対応策を解説していきます。

目次

夫が不倫をしたとき、妻の選択肢は3つ

夫が不倫をしたとき、妻の選択肢は3つ

夫が不倫をしていることを妻が知るきっかけとして多いのは、「夫が携帯電話を離さないようになった」「服装や髪型に気を遣うようになった」「残業や出張を理由に帰宅しない日が多くなった」などが挙げられます。

中には夫が自ら不倫を告白するケースもありますが、どのような経緯にしても妻はショックを受け、裏切られた哀しさ・悔しさで精神的に不安定な状態に陥ってしまいます。

何も考えられない状況にあって今後の対策を立てるのは難しいことです。かといって不倫を黙認すれば、夫と不倫相手の関係が一層深くなって妊娠・出産する可能性も出てきます。

婚外子が誕生すると認知や、養育費、財産相続権などを不倫相手から要求されることがあり、事態はさらに複雑・深刻化していきます。

それを回避するためにも、不倫が発覚したら早い段階で対応の仕方を検討するようにしましょう。

夫の不倫が発覚したときに妻が取るべき行動・対応策としては、次の3つの選択肢があります。

  1. 家庭を守るために結婚生活を継続する
  2. 夫婦関係修復のための冷却期間として、あるいは離婚の準備期間として別居する
  3. 結婚生活の継続は無理だから離婚する

次項からそれぞれの対応策について詳しく見ていきましょう。

結婚生活を継続したいときは不倫関係を解消させる交渉を

結婚生活を継続したいときは不倫関係を解消させる交渉を

夫に対する愛情が変わらず、子供など家族のことを考えて結婚生活を継続させるという場合は、夫と不倫相手の関係を解消させることを第一に考えましょう。

前述したように不倫を黙認すると、夫は「不倫をしても妻は何も言わない」と勘違いして、ますます家庭を顧みなくなる恐れがあるからです。

示談書を書かせるだけでは効果は期待できない

不倫関係を解消させるには、妻と夫が二人で話し合い、夫に不倫をやめるという示談書(誓約書・和解書)を書かせる方法があります。しかし、実際は不倫関係が続いていたというケースが少なくありません。

示談書を作成しておけば、夫が違反したとき約束を履行するよう促すことはできますが、強制力はありません。

強制力を発揮できるのは金銭の支払いに関することだけで、相手の行動を制限することはできないため、夫の不倫関係を解消させることはなかなか難しくなります。

また、社内不倫など相手が仕事関係者の場合、妻が不倫相手に制裁を与える意味で会社の上司や同僚に告げ口をするケースもありますが、このような方法は名誉棄損で相手から訴えられる恐れがあります。

そればかりか、もし不倫相手が職場にいられなくなって辞職することになればその女性から損害賠償を請求されることもあり得ます。

慰謝料請求は法律で認められた権利

そうした法に触れるような行動は避けて、正攻法で対応するようにしましょう。それには「慰謝料」の請求という方法があります。

浮気や不倫は法律では不貞行為と言い、不貞をした人に精神的苦痛を与えられたとして慰謝料を請求するのは法で認められた権利です。

これまで夫婦関係に問題はなかったのに、不倫関係が始まってから夫婦仲が冷えてきて、平穏な結婚生活を送る権利を侵害されたということを妻がはっきり主張できれば、慰謝料の金額も高めに請求することができます。

慰謝料は夫と不倫相手の両方に請求することもできますが、夫は許して不倫相手にだけ法的なペナルティを科したいという場合は、相手の女性だけに求めることも可能です。

不倫慰謝料の請求の仕方については、後の章で詳述していますので参考にしてください。

別居するときは生活費を確保する

別居するときは生活費を確保する

別居することを選ぶ理由としては、「裏切った夫を困らせてやりたい」「夫婦関係を見つめ直したい」「離婚するための準備をしたい」などが多いものです。

浮気や不倫という裏切り行為をした旦那とは一緒にいられないと思うのは無理もありませんが、後先を考えずに家を出て行ったりすることは避けるべきです。

自分に十分な収入がない場合は、これからの住まいや生活費、子供の養育費などを考えて冷静に判断する必要があります。

別居中は夫に「婚姻費用」を請求できる

婚姻関係にある夫婦には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなればならない」と定められています(民法752条)。

結婚生活を送るうえで必要な住居費、食費、衣服費、医療費、交際費、子供の教育費その他の生活費は夫婦それぞれの収入・資産に応じて分担する義務があるとされています。

夫婦生活に必要なこれらの費用を「婚姻費用」といい、夫婦が別居しても婚姻関係が続く限り分担する義務も消滅することはありません。

つまり、別居中であっても妻の収入が少ない場合は、収入の多い夫に生活費の分担額を請求できるということです(婚姻費用分担請求)。

夫の不倫が原因で別居するときは、別居を始める前に今後の生活について話し合い、婚姻費用の分担額を決めておく必要があります。分担額はその家庭の生活水準によって異なり、月額6万~13万円程度が相場となっています。

別居してからでは夫婦で話し合うことが難しくなり、生活費がもらえず困窮する事態になりかねません。

夫婦間での話し合いで折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求の調停もしくは審判を申し立てて、生活費の分担額を決めてもらうことになります。

家庭裁判所では算定表を利用して分担額を決めますが、算定表の金額は一般の相場より低めのことが多いため、別居前と同じ水準のライフスタイルを維持するのは難しいというのが実状のようです。

合意したことは公正証書にしておこう

別居しても夫婦関係を修復して婚姻関係を継続したいという場合は、二人で話し合って約束したことは合意書(示談書)として作成しておくことが大切です。

別居すれば家計も2つに分かれることになり、収入が増えない限り別居前より経済的に厳しくなるでしょう。

また、夫婦の信頼関係が崩れかけている状態ですから、婚姻費用の支払いが滞ることもあり得ます。

合意書を作成すれば約束事は必ず守られるという保証はないものの、婚姻費用の不払いやその他の約束違反が生じたときは、その合意書をもとに督促することができます。

離婚を視野に入れている場合は、契約書を公正証書にしておくと法的拘束力をもつため、不払いが続くようなときは夫の給与を差し押さえすることも可能になります。

離婚するときは慰謝料・財産分与・養育費の取り決めも抜かりなく

離婚するときは慰謝料・財産分与・養育費の取り決めも抜かりなく

旦那の不倫が許せず離婚して再出発する道を選ぶという場合は、二人の話し合いによる協議離婚の手続きを取ります。

不倫の当事者である夫が離婚を拒否しても、不貞行為は離婚事由になるため夫の主張は通りません。

協議離婚をする際に話し合うべきことは主に①離婚慰謝料、②財産分与、③子供の親権・養育費です。それぞれについて自分にとって有利に進めるためのポイントを見ていきましょう。

離婚慰謝料

浮気や不倫などで請求する「不貞慰謝料」とは別に、離婚に伴う「離婚慰謝料」があります。

配偶者の不貞行為で精神的苦痛を受けたという理由で請求するのが「不貞慰謝料」ですが、これをすでに受け取っている場合は、同じ理由で離婚慰謝料を請求するのは二重取りになるため、認められません。不貞行為の慰謝料イコール離婚慰謝料という考えなのです。

夫からも相手の女性からも不貞慰謝料を受け取っていない場合は、協議の中で離婚慰謝料の金額や支払期日、方法を取り決めるようにします。

なお、不貞行為のほかにDV(ドメスティックバイオレンス:身体的な暴力)やモラハラ(モラルハラスメント:精神的な虐待)が繰り返されていた場合は、両方を別々に請求することが認められています。

財産分与

財産分与の対象となるのは、不動産、現金や預貯金、有価証券、退職金、年金などです。財産の名義は問われないので、妻がパートの賃金を貯めた分なども財産分与の対象となります。

結婚後に家をローンで購入し、夫が債務者、妻が連帯保証人になっている場合は、離婚しても連帯保証人を解除することは基本的にはできません。

ローンの借り換えをして債務者単独のローンにするか、代わりの保証人を立てることで解除されることがありますが、債権者(金融機関など)の了承が必要になります。

結婚前に築いた財産や親から譲り受けた不動産などは特有財産と言い、財産分与の対象外とされています。

なお、財産分与は離婚慰謝料に含む考えもあるので、どちらにするかをはっきり決めておくことが大切です。

子供の親権・養育費

まだ経済的に自立できない子供がいる場合、子供の親権を持つ親に対して、親権を持たない親が養育費を支払う義務を負います。

養育費は子供を育てていくために必要な費用のことで、離婚の原因に関わらず、支払いを拒否することはできません。

支払い期間は成人までとするのが一般的ですが、高校卒業まで、大学卒業までなど、二人の話し合いで決定されることも多くなっています。

養育費は負担する側の経済力によって決められます。

金額は一定ではなく、子供の成長に応じて加算されるのが普通です。子供が自立できるまでいくら必要かを検討し、また支払日や支払い方法についてもよく話し合い、取り決めたことは必ず書面にしておきましょう。

離婚協議書を作成する

協議で離婚が成立し、慰謝料や財産分与、養育費などの条件が決定したらその決定事項を離婚協議書に盛り込むようにします。

法的拘束力のある書類にしたい場合は、離婚協議書を公正証書として作成してもらいましょう。公正証書があれば、裁判をしなくとも相手の財産を差し押さえる強制執行が可能になります。

夫・不倫相手に慰謝料を請求する際に知っておきたいこと

夫・不倫相手に慰謝料を請求する際に知っておきたいこと

慰謝料は「精神的苦痛を受けた際の損害賠償金」の意味で、精神的苦痛を受けた被害者は加害者(不倫関係にある当事者二人)に対して不貞慰謝料を請求することができます。しかし、どのよう場合でも請求が認められるわけではありません。

ここでは、慰謝料を請求できないケースのほか、請求の仕方などについて見ていきましょう。

こんな場合は不貞慰謝料の請求ができない

不倫相手の名前や住所がわかったとしても、次のようなことに該当すれば慰謝料を請求することはできません。

  • 不倫相手に故意・過失が認められない(たとえば出会い系サイトで知り合ったなど、相手が夫のことを独身だと信じ、まさか既婚者とは思わなかったという場合)
  • 自分たちの結婚生活が破綻している(何らかの原因で夫婦仲が悪化し、別居していた場合)
  • すでに精神的な損害を償うだけの賠償を受けている(夫または不倫相手から相当額の慰謝料を受け取っている場合)
  • 慰謝料請求権の時効が成立している(妻が夫の不倫を知った時から3年あるいは不倫が始まってから20年が過ぎると損害賠償の請求権は時効となり、それ以降は請求できない)

夫も相手も不倫を認めない場合は証拠を示す必要がある

不倫していることがわかったとしても、夫も相手も事実と認めず、不倫の証拠もなければその先に進むことができません。

夫婦関係をやり直す場合でも、不倫の事実を認めさせて反省を促すには確たる証拠が必要です。

離婚して慰謝料を請求する際は不倫の事実を立証しなければなりませんから、なおのこと証拠が必要になります。

証拠は不貞行為をしていたことを示すものであればどんなものでもよいとされていますが、裁判になったときに有利になる証拠は次のようなものです。

携帯電話やメール・ラインの通信内容

携帯電話やSNSなどの通信内容で性的関係にあることがわかるもの。食事や映画に誘われただけのお礼や感想などは証拠になりません。

不倫関係を思わせる写真や動画

ラブホテルに出入りしている写真または動画。シティホテルやビジネスホテルでは証拠として認められない場合が多いものです。

領収書・クレジットカードの利用履歴

ラブホテルの領収書やクレジットカードの利用明細書も証拠として認められます。なお、ラブホテルの名称はほとんどが「〇〇商事」「○○サービス」など一般の会社名になっています。

そのほか、女性の喜びそうな贈り物をしたことが窺える高級店の領収書なども証拠となります。

不倫相手だけに慰謝料を請求するときは

不倫相手の女性が夫を既婚者と知っていながら肉体関係を持った場合は、「故意・過失があった」として夫と共に慰謝料を支払う義務が課せられます。

妻が慰謝料を請求できるのは、「夫だけに」「夫と相手の女性の二人に」「相手の女性だけに」の3パターンがあります。

婚姻を継続する道を選ぶ場合は、家計を同じくする夫に金銭を求めるのは意味がないことと、夫婦関係を再構築していくうえでしこりを残さないために相手の女性だけに請求するケースが多く見られます。

求償権について理解しておく

不倫相手の女性だけに請求する場合に知っておきたいことは、慰謝料を支払った側には「求償権」があるという点です。

求償権とは、本来なら二人が分担して払うべき慰謝料を一人で支払った場合に、もう一人に分担額を請求できる権利のことです。

たとえば、慰謝料の請求額が200万円の場合、夫と相手女性の分担割合が5対5とすれば、女性が200万円を支払っても夫に100万円を請求することができるというわけです。

つまり、女性一人に請求しても結果的には夫に半分請求していることになりますから、金額を設定する際はより冷静に判断する必要があります。

慰謝料請求は内容証明郵便が確実

内容証明郵便は、いつ、だれが、だれに、どんな内容の文書を通知したかを証明する郵便サービスの1つ。配達は手渡しで行われ、受領サインも求められます(サインは本人以外でも可)。受け取りを拒否した場合は、差出人に「受け取り拒否」である旨が伝えられることになります。

内容証明郵便には法的拘束力はないのですが、受け取った側は差出人が本気で争う気でいると感じ、心理的なプレッシャーから速やかに要求に応じるという効果があります。

証拠集めや慰謝料の請求の仕方で悩んでいる方は専門家に相談を

証拠集めや慰謝料の請求の仕方で悩んでいる方は専門家に相談を

夫とやり直すために話し合うときでも、あるいは離婚を前提に慰謝料を請求するときでも、夫が不倫を認めない場合は証拠を提示する必要があります。しかし、証拠を集めるのは個人保護法のこともあってそう簡単なことではありません。

興信所や探偵に依頼する方法もありますが、料金が高額であることや、中には詐欺まがいの悪質な業者も存在しているので注意が必要です。

また、約束事を公正証書に作成する方法や慰謝料の請求の仕方など、初めての方には戸惑うことばかりでしょう。対応が遅れればそれだけ問題も複雑化するばかりですから、わからないことはすぐにでも専門家に相談することをおすすめします。

NPO法人よつばでは、夫の不倫を知ってひとりで悩んでいる方のために、専門のカウンセラーがアドバイスをするとともに、不倫問題に強い弁護士の紹介も行っています。相談は無料ですから苦しい思いを吐き出すつもりで利用してみるといいでしょう。

夫が不倫したときに妻がすべきこと【まとめ】

夫が不倫したときに妻がすべきこと【まとめ】

夫の不倫を知って落ち着いていられる人はいないでしょう。しかし、冷静さを失ったときの判断は後悔の素です。

「結婚生活を継続する」「別居する」「離婚する」の3つの選択肢からどの道を選べば1年後だけでなく3年後も5年後も自分らしく生きられるかを考えてみましょう。

近くに相談相手がいないという方は、一人で悩まずに「NPO法人よつば」にいつでも相談してください。無料相談は電話やメールのほか、距離的に来所が可能な方は直接対面による相談も行っています。

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夫の不倫が発覚した場合に取るべき行動・対応策とは?
夫の不倫が発覚した場合に取るべき行動・対応策とは?

夫の不倫で妻が取るべき選択肢と慰謝料請求についての紹介

結婚した二人には配偶者以外の異性と性交渉をしないという貞操義務が課せられています。この義務に違反する不倫は不貞行為として慰謝料の対象になります。

しかし、夫の不倫を知った妻はどのような行動を取ればよいのか、すぐには判断できるものではありません。また、どのような行動が正解というものもありません。

そこで今回は3つの選択肢を挙げ、夫の不倫で悩んでいる方が自分に合った最善の道を選べるよう、さまざまな角度から対応策を解説していきます。

目次

夫が不倫をしたとき、妻の選択肢は3つ

夫が不倫をしたとき、妻の選択肢は3つ

夫が不倫をしていることを妻が知るきっかけとして多いのは、「夫が携帯電話を離さないようになった」「服装や髪型に気を遣うようになった」「残業や出張を理由に帰宅しない日が多くなった」などが挙げられます。

中には夫が自ら不倫を告白するケースもありますが、どのような経緯にしても妻はショックを受け、裏切られた哀しさ・悔しさで精神的に不安定な状態に陥ってしまいます。

何も考えられない状況にあって今後の対策を立てるのは難しいことです。かといって不倫を黙認すれば、夫と不倫相手の関係が一層深くなって妊娠・出産する可能性も出てきます。

婚外子が誕生すると認知や、養育費、財産相続権などを不倫相手から要求されることがあり、事態はさらに複雑・深刻化していきます。

それを回避するためにも、不倫が発覚したら早い段階で対応の仕方を検討するようにしましょう。

夫の不倫が発覚したときに妻が取るべき行動・対応策としては、次の3つの選択肢があります。

  1. 家庭を守るために結婚生活を継続する
  2. 夫婦関係修復のための冷却期間として、あるいは離婚の準備期間として別居する
  3. 結婚生活の継続は無理だから離婚する

次項からそれぞれの対応策について詳しく見ていきましょう。

結婚生活を継続したいときは不倫関係を解消させる交渉を

結婚生活を継続したいときは不倫関係を解消させる交渉を

夫に対する愛情が変わらず、子供など家族のことを考えて結婚生活を継続させるという場合は、夫と不倫相手の関係を解消させることを第一に考えましょう。

前述したように不倫を黙認すると、夫は「不倫をしても妻は何も言わない」と勘違いして、ますます家庭を顧みなくなる恐れがあるからです。

示談書を書かせるだけでは効果は期待できない

不倫関係を解消させるには、妻と夫が二人で話し合い、夫に不倫をやめるという示談書(誓約書・和解書)を書かせる方法があります。しかし、実際は不倫関係が続いていたというケースが少なくありません。

示談書を作成しておけば、夫が違反したとき約束を履行するよう促すことはできますが、強制力はありません。

強制力を発揮できるのは金銭の支払いに関することだけで、相手の行動を制限することはできないため、夫の不倫関係を解消させることはなかなか難しくなります。

また、社内不倫など相手が仕事関係者の場合、妻が不倫相手に制裁を与える意味で会社の上司や同僚に告げ口をするケースもありますが、このような方法は名誉棄損で相手から訴えられる恐れがあります。

そればかりか、もし不倫相手が職場にいられなくなって辞職することになればその女性から損害賠償を請求されることもあり得ます。

慰謝料請求は法律で認められた権利

そうした法に触れるような行動は避けて、正攻法で対応するようにしましょう。それには「慰謝料」の請求という方法があります。

浮気や不倫は法律では不貞行為と言い、不貞をした人に精神的苦痛を与えられたとして慰謝料を請求するのは法で認められた権利です。

これまで夫婦関係に問題はなかったのに、不倫関係が始まってから夫婦仲が冷えてきて、平穏な結婚生活を送る権利を侵害されたということを妻がはっきり主張できれば、慰謝料の金額も高めに請求することができます。

慰謝料は夫と不倫相手の両方に請求することもできますが、夫は許して不倫相手にだけ法的なペナルティを科したいという場合は、相手の女性だけに求めることも可能です。

不倫慰謝料の請求の仕方については、後の章で詳述していますので参考にしてください。

別居するときは生活費を確保する

別居するときは生活費を確保する

別居することを選ぶ理由としては、「裏切った夫を困らせてやりたい」「夫婦関係を見つめ直したい」「離婚するための準備をしたい」などが多いものです。

浮気や不倫という裏切り行為をした旦那とは一緒にいられないと思うのは無理もありませんが、後先を考えずに家を出て行ったりすることは避けるべきです。

自分に十分な収入がない場合は、これからの住まいや生活費、子供の養育費などを考えて冷静に判断する必要があります。

別居中は夫に「婚姻費用」を請求できる

婚姻関係にある夫婦には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなればならない」と定められています(民法752条)。

結婚生活を送るうえで必要な住居費、食費、衣服費、医療費、交際費、子供の教育費その他の生活費は夫婦それぞれの収入・資産に応じて分担する義務があるとされています。

夫婦生活に必要なこれらの費用を「婚姻費用」といい、夫婦が別居しても婚姻関係が続く限り分担する義務も消滅することはありません。

つまり、別居中であっても妻の収入が少ない場合は、収入の多い夫に生活費の分担額を請求できるということです(婚姻費用分担請求)。

夫の不倫が原因で別居するときは、別居を始める前に今後の生活について話し合い、婚姻費用の分担額を決めておく必要があります。分担額はその家庭の生活水準によって異なり、月額6万~13万円程度が相場となっています。

別居してからでは夫婦で話し合うことが難しくなり、生活費がもらえず困窮する事態になりかねません。

夫婦間での話し合いで折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求の調停もしくは審判を申し立てて、生活費の分担額を決めてもらうことになります。

家庭裁判所では算定表を利用して分担額を決めますが、算定表の金額は一般の相場より低めのことが多いため、別居前と同じ水準のライフスタイルを維持するのは難しいというのが実状のようです。

合意したことは公正証書にしておこう

別居しても夫婦関係を修復して婚姻関係を継続したいという場合は、二人で話し合って約束したことは合意書(示談書)として作成しておくことが大切です。

別居すれば家計も2つに分かれることになり、収入が増えない限り別居前より経済的に厳しくなるでしょう。

また、夫婦の信頼関係が崩れかけている状態ですから、婚姻費用の支払いが滞ることもあり得ます。

合意書を作成すれば約束事は必ず守られるという保証はないものの、婚姻費用の不払いやその他の約束違反が生じたときは、その合意書をもとに督促することができます。

離婚を視野に入れている場合は、契約書を公正証書にしておくと法的拘束力をもつため、不払いが続くようなときは夫の給与を差し押さえすることも可能になります。

離婚するときは慰謝料・財産分与・養育費の取り決めも抜かりなく

離婚するときは慰謝料・財産分与・養育費の取り決めも抜かりなく

旦那の不倫が許せず離婚して再出発する道を選ぶという場合は、二人の話し合いによる協議離婚の手続きを取ります。

不倫の当事者である夫が離婚を拒否しても、不貞行為は離婚事由になるため夫の主張は通りません。

協議離婚をする際に話し合うべきことは主に①離婚慰謝料、②財産分与、③子供の親権・養育費です。それぞれについて自分にとって有利に進めるためのポイントを見ていきましょう。

離婚慰謝料

浮気や不倫などで請求する「不貞慰謝料」とは別に、離婚に伴う「離婚慰謝料」があります。

配偶者の不貞行為で精神的苦痛を受けたという理由で請求するのが「不貞慰謝料」ですが、これをすでに受け取っている場合は、同じ理由で離婚慰謝料を請求するのは二重取りになるため、認められません。不貞行為の慰謝料イコール離婚慰謝料という考えなのです。

夫からも相手の女性からも不貞慰謝料を受け取っていない場合は、協議の中で離婚慰謝料の金額や支払期日、方法を取り決めるようにします。

なお、不貞行為のほかにDV(ドメスティックバイオレンス:身体的な暴力)やモラハラ(モラルハラスメント:精神的な虐待)が繰り返されていた場合は、両方を別々に請求することが認められています。

財産分与

財産分与の対象となるのは、不動産、現金や預貯金、有価証券、退職金、年金などです。財産の名義は問われないので、妻がパートの賃金を貯めた分なども財産分与の対象となります。

結婚後に家をローンで購入し、夫が債務者、妻が連帯保証人になっている場合は、離婚しても連帯保証人を解除することは基本的にはできません。

ローンの借り換えをして債務者単独のローンにするか、代わりの保証人を立てることで解除されることがありますが、債権者(金融機関など)の了承が必要になります。

結婚前に築いた財産や親から譲り受けた不動産などは特有財産と言い、財産分与の対象外とされています。

なお、財産分与は離婚慰謝料に含む考えもあるので、どちらにするかをはっきり決めておくことが大切です。

子供の親権・養育費

まだ経済的に自立できない子供がいる場合、子供の親権を持つ親に対して、親権を持たない親が養育費を支払う義務を負います。

養育費は子供を育てていくために必要な費用のことで、離婚の原因に関わらず、支払いを拒否することはできません。

支払い期間は成人までとするのが一般的ですが、高校卒業まで、大学卒業までなど、二人の話し合いで決定されることも多くなっています。

養育費は負担する側の経済力によって決められます。

金額は一定ではなく、子供の成長に応じて加算されるのが普通です。子供が自立できるまでいくら必要かを検討し、また支払日や支払い方法についてもよく話し合い、取り決めたことは必ず書面にしておきましょう。

離婚協議書を作成する

協議で離婚が成立し、慰謝料や財産分与、養育費などの条件が決定したらその決定事項を離婚協議書に盛り込むようにします。

法的拘束力のある書類にしたい場合は、離婚協議書を公正証書として作成してもらいましょう。公正証書があれば、裁判をしなくとも相手の財産を差し押さえる強制執行が可能になります。

夫・不倫相手に慰謝料を請求する際に知っておきたいこと

夫・不倫相手に慰謝料を請求する際に知っておきたいこと

慰謝料は「精神的苦痛を受けた際の損害賠償金」の意味で、精神的苦痛を受けた被害者は加害者(不倫関係にある当事者二人)に対して不貞慰謝料を請求することができます。しかし、どのよう場合でも請求が認められるわけではありません。

ここでは、慰謝料を請求できないケースのほか、請求の仕方などについて見ていきましょう。

こんな場合は不貞慰謝料の請求ができない

不倫相手の名前や住所がわかったとしても、次のようなことに該当すれば慰謝料を請求することはできません。

  • 不倫相手に故意・過失が認められない(たとえば出会い系サイトで知り合ったなど、相手が夫のことを独身だと信じ、まさか既婚者とは思わなかったという場合)
  • 自分たちの結婚生活が破綻している(何らかの原因で夫婦仲が悪化し、別居していた場合)
  • すでに精神的な損害を償うだけの賠償を受けている(夫または不倫相手から相当額の慰謝料を受け取っている場合)
  • 慰謝料請求権の時効が成立している(妻が夫の不倫を知った時から3年あるいは不倫が始まってから20年が過ぎると損害賠償の請求権は時効となり、それ以降は請求できない)

夫も相手も不倫を認めない場合は証拠を示す必要がある

不倫していることがわかったとしても、夫も相手も事実と認めず、不倫の証拠もなければその先に進むことができません。

夫婦関係をやり直す場合でも、不倫の事実を認めさせて反省を促すには確たる証拠が必要です。

離婚して慰謝料を請求する際は不倫の事実を立証しなければなりませんから、なおのこと証拠が必要になります。

証拠は不貞行為をしていたことを示すものであればどんなものでもよいとされていますが、裁判になったときに有利になる証拠は次のようなものです。

携帯電話やメール・ラインの通信内容

携帯電話やSNSなどの通信内容で性的関係にあることがわかるもの。食事や映画に誘われただけのお礼や感想などは証拠になりません。

不倫関係を思わせる写真や動画

ラブホテルに出入りしている写真または動画。シティホテルやビジネスホテルでは証拠として認められない場合が多いものです。

領収書・クレジットカードの利用履歴

ラブホテルの領収書やクレジットカードの利用明細書も証拠として認められます。なお、ラブホテルの名称はほとんどが「〇〇商事」「○○サービス」など一般の会社名になっています。

そのほか、女性の喜びそうな贈り物をしたことが窺える高級店の領収書なども証拠となります。

不倫相手だけに慰謝料を請求するときは

不倫相手の女性が夫を既婚者と知っていながら肉体関係を持った場合は、「故意・過失があった」として夫と共に慰謝料を支払う義務が課せられます。

妻が慰謝料を請求できるのは、「夫だけに」「夫と相手の女性の二人に」「相手の女性だけに」の3パターンがあります。

婚姻を継続する道を選ぶ場合は、家計を同じくする夫に金銭を求めるのは意味がないことと、夫婦関係を再構築していくうえでしこりを残さないために相手の女性だけに請求するケースが多く見られます。

求償権について理解しておく

不倫相手の女性だけに請求する場合に知っておきたいことは、慰謝料を支払った側には「求償権」があるという点です。

求償権とは、本来なら二人が分担して払うべき慰謝料を一人で支払った場合に、もう一人に分担額を請求できる権利のことです。

たとえば、慰謝料の請求額が200万円の場合、夫と相手女性の分担割合が5対5とすれば、女性が200万円を支払っても夫に100万円を請求することができるというわけです。

つまり、女性一人に請求しても結果的には夫に半分請求していることになりますから、金額を設定する際はより冷静に判断する必要があります。

慰謝料請求は内容証明郵便が確実

内容証明郵便は、いつ、だれが、だれに、どんな内容の文書を通知したかを証明する郵便サービスの1つ。配達は手渡しで行われ、受領サインも求められます(サインは本人以外でも可)。受け取りを拒否した場合は、差出人に「受け取り拒否」である旨が伝えられることになります。

内容証明郵便には法的拘束力はないのですが、受け取った側は差出人が本気で争う気でいると感じ、心理的なプレッシャーから速やかに要求に応じるという効果があります。

証拠集めや慰謝料の請求の仕方で悩んでいる方は専門家に相談を

証拠集めや慰謝料の請求の仕方で悩んでいる方は専門家に相談を

夫とやり直すために話し合うときでも、あるいは離婚を前提に慰謝料を請求するときでも、夫が不倫を認めない場合は証拠を提示する必要があります。しかし、証拠を集めるのは個人保護法のこともあってそう簡単なことではありません。

興信所や探偵に依頼する方法もありますが、料金が高額であることや、中には詐欺まがいの悪質な業者も存在しているので注意が必要です。

また、約束事を公正証書に作成する方法や慰謝料の請求の仕方など、初めての方には戸惑うことばかりでしょう。対応が遅れればそれだけ問題も複雑化するばかりですから、わからないことはすぐにでも専門家に相談することをおすすめします。

NPO法人よつばでは、夫の不倫を知ってひとりで悩んでいる方のために、専門のカウンセラーがアドバイスをするとともに、不倫問題に強い弁護士の紹介も行っています。相談は無料ですから苦しい思いを吐き出すつもりで利用してみるといいでしょう。

夫が不倫したときに妻がすべきこと【まとめ】

夫が不倫したときに妻がすべきこと【まとめ】

夫の不倫を知って落ち着いていられる人はいないでしょう。しかし、冷静さを失ったときの判断は後悔の素です。

「結婚生活を継続する」「別居する」「離婚する」の3つの選択肢からどの道を選べば1年後だけでなく3年後も5年後も自分らしく生きられるかを考えてみましょう。

近くに相談相手がいないという方は、一人で悩まずに「NPO法人よつば」にいつでも相談してください。無料相談は電話やメールのほか、距離的に来所が可能な方は直接対面による相談も行っています。

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