1. 浮気・不倫で慰謝料を請求「できる場合」と「できない場合」の基準を解説
浮気・不倫で慰謝料を請求「できる場合」と「できない場合」の基準を解説
浮気・不倫で慰謝料を請求「できる場合」と「できない場合」の基準を解説

不貞行為に対する慰謝料の請求が可能・不可能な場合を紹介

慰謝料とは、他者の行為によって「精神的苦痛」を受けた際に発生する損害賠償金のことです。配偶者のDVやモラハラ、浮気、不倫などが原因で心をひどく傷つけられたときは、お金で償ってもらうことができます。

しかし、浮気や不倫はどのようなケースでも慰謝料を請求できるというわけではありません。

ここでは、配偶者の浮気・不倫で慰謝料請求を考えている方のために、請求が可能な場合と不可能な場合を解説し、請求の方法についてもわかりやすく紹介していきます。

目次

なぜ浮気・不倫で慰謝料を請求できるの?

なぜ浮気・不倫で慰謝料を請求できるの?

夫婦関係は生活を共にするだけでも成立しますが、平穏な夫婦生活を維持するには継続的な性的結びつきも重要な要素であるため、結婚した二人には配偶者以外の異性と性交渉をしないという義務(貞操義務)が課せられています。

浮気や不倫はこの貞操義務に違反する行為であり、不法行為に当たります(民法709条)。

法律上は「不倫」という言葉はなく、貞操義務に違反する浮気・不倫は「不貞行為」と呼ばれています。この不貞行為によって、平穏な生活を送る権利を侵害されて精神的苦痛を受けた場合、権利を侵害した側は慰謝料を支払う義務を負うことになるのです(民法710条)。

1回だけの不貞行為でも、精神的苦痛が大きければ請求することができ、状況によっては高額の慰謝料を請求できるケースもあります。

また、慰謝料の請求は、婚姻届を提出した法律婚だけでなく、事実婚や同性婚の場合でも認められるようになりました。

ちなみに、生活を共にしていない恋人関係の場合は、貞操を守る義務はないため、相手が浮気をしても慰謝料の請求はできません。

民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

不貞行為でも絶対できるとは限らない

不貞行為でも絶対できるとは限らない

配偶者の不貞行為が発覚して精神的苦痛を受けた側は、どのような場合でも慰謝料を請求できるかというとそうではありません。では、請求が認められるケースと認められないケースに分けて見ていきましょう。

慰謝料請求ができる場合

  1. 不倫相手が既婚者であることがわかっていながら自由意思で性的関係を結んだ
  2. 相手方が既婚者であることを把握できる状況にありながら、把握せずに性的関係を結んだ
  3. 相手方は 既婚者だが婚姻関係が破綻していると思い込み、注意を払えば破綻していないことに気づくことができたにも関わらず、性的関係を持った
  4. 円満だった夫婦が、配偶者の不貞行為によって夫婦関係が悪化し、離婚に至ってしまった
  5. 配偶者と不倫相手に肉体関係はないが、夫婦の平穏な生活を脅かし破壊する恐れがあるほど親密な関係にあった

慰謝料請求ができない場合

  1. 相手方が配偶者を独身だと過失なく信じていた
  2. 夫婦仲が悪化し、すでに別居していた
  3. 出会い系サイトやマッチングアプリなどで知り合い、既婚かどうかわからないまま肉体関係を結んだ
  4. すでに精神的な損害を償うだけの十分な慰謝料を受け取っている場合
  5. 時効が成立している場合(時効については後述)

故意または過失によるかどうかがカギ

以上のように、慰謝料請求ができるのは、浮気や不倫をした側に「故意」または「過失」があった場合に限られます。

故意とは「わざとすること」といった意味で、浮気や不倫の相手が既婚者であることを知りながら性行為に及ぶことです。もう1つの「過失」は、注意すれば回避できたにもかかわらず注意を怠ったことを指し、「落ち度」と言い換えることもできます。

もし、知り合った異性が結婚指輪をしていない、家庭や子供の話は一切しない、本人も独身と紹介したとすれば、相手は独身者と信じてしまうでしょう。

このように、相手が既婚者とは知らず、また、知らないことが不注意だとも言い切れないような場合は、民法709条の「故意・過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は~」の「故意・過失」とは認められないため、不法行為は成立しません。

つまり、慰謝料を請求しても相手には支払いの義務が発生しないということを心得ておきましょう。

浮気・不倫の慰謝料の相場は?

浮気・不倫の慰謝料の相場は?

慰謝料を請求するのは不倫をされた側ですから、自分の気が済む金額を要求しても請求そのものは有効です。しかし、高額すぎて相手側が承諾できなければ支払いは期待できません。

慰謝料の金額は、「有責行為(不貞や暴力など離婚の原因となる行為)の度合い」「婚姻期間」「婚姻生活の実情」「子供の有無」「収入」「負債」「関係修復の努力の有無」のほか、ノイローゼやうつ病など有責行為によって発症した疾患の有無、不倫相手の妊娠の有無なども考慮して決められるのが一般的です。

不倫慰謝料の金額は、離婚まで行かない場合は50万~150万程度、離婚した場合は150万~300万円が相場とされています。

これはあくまでも相場で、不倫した側に支払い能力があれば相場を大きく上回る金額を請求することも可能です。

慰謝料はだれに請求すればいい?

慰謝料はだれに請求すればいい?

不倫の慰謝料を請求する先は、配偶者(パートナー)のみ、配偶者と不倫相手の両者、不倫相手のみの3パターンが考えられます。

配偶者(パートナー)に請求する

不倫相手が配偶者のことを独身と信じて肉体関係を持っていた場合は慰謝料の請求はできないので、配偶者(パートナー)だけに請求することになります。

配偶者(パートナー)と不倫相手に請求する

配偶者と離婚する決意をしている人の場合は、不倫関係にある二人に請求するケースが多く見られます。既婚者と知っていて不倫関係にあるのは共同不法行為にあたり、同じように慰謝料の支払い義務を負うからです。

仮に慰謝料は200万円と決まった場合、それぞれに全額の200万円を請求することができます。請求された側は、責任の負担割合に応じて支払うことになります。負担割合は二人の立場や状況によって違ってきますが、負担割合を50:50とすれば一人100万円です。

もし、一方が全額200万円を支払った場合は、もう一方に負担分を超えた金額(この例では100万円)を要求することも可能です。これを「求償権の行使」と言います。

不倫相手のみに請求する

配偶者との離婚を前提としない場合は、慰謝料は不倫相手一人に請求することになります。生計を一にする夫婦間で金銭のやり取りは意味がないことや、夫婦関係の立て直しにわだかまりを残さないようにするためです。

不倫相手のみに請求する場合は、どちらから性的関係を持つよう働きかけたか、また、不貞を継続させるためにどちらが積極的であったかということが請求金額にも影響します。

そうした点も客観的に把握して金額を決めないと、相手から「事実と異なる」と反論され、支払いを拒否されることがあります。

不貞行為(浮気・不倫)にも時効がある

不貞行為(浮気・不倫)にも時効がある

損害賠償金には請求期限が定められており、それを過ぎる時効が完成して請求権が消滅します。不倫慰謝料の場合も同じで、下記のいずれかに該当するときは時効となります。

  1. 不貞行為の事実を知ってから3年間、慰謝料請求権を行使しなかった
  2. 不貞行為が始まった時から20年間、慰謝料請求権を行使しなかった

不貞行為の時効は3年間が原則。浮気・不倫の事実を知った時から3年の間、慰謝料の請求をしなかった場合は時効が完成し、それ以降は請求することができなくなります。

しかし、不倫に気づかなかったり、気づいても相手の名前や住所など身元を特定できない場合は、不倫が始まってから20年以内であれば請求することができます。これを除斥期間といい、被害者に不利益が生じないように設けられた期間です。

また、不倫が原因で離婚に至ったときは、不倫の事実を知ってから3年以上経過していても、離婚から3年以内であれば慰謝料を請求することができます。一方の不倫相手に対しては、離婚後に慰謝料を請求することはできません。

ただ、離婚後に慰謝料を請求しても、元配偶者がそれを承諾して支払ってくれる確率はかなり低いというのが実情です。

慰謝料の請求の仕方

慰謝料の請求の仕方

慰謝料の請求の仕方には、当事者同士の話し合い、内容証明郵便による請求、弁護士に代理交渉してもらう裁判があります。それぞれのメリット・デメリットを挙げてみます。

当事者同士の話し合い(直接交渉)

不倫相手と口頭や電話で話し合うというケースは多いものです。直接交渉のメリットは、相手にじっくり考える時間や責任逃れのための言葉選びをする時間を与えないため、それだけ早く解決に向かうことが可能な点です。

デメリットは、自分にも考える時間は与えられないため、余計なことを言ったりして交渉失敗に終わる恐れがあること。また、あとで「言った」「言わない」の水掛け論になりやすい点も挙げられます。

内容証明郵便による請求

内容証明は、どんな内容の文書を、いつ、だれが、だれに送ったかを郵便局が証明するサービスです。メリットは、口頭の交渉でありがちな「言った、言わない」を回避できる点です。

さらに、内容証明郵便そのものに法的拘束力はないものの、受け取った側に「内容証明を送るとは、相手は裁判も辞さないつもりか」といった本気度を感じさせ、心理的なプレッシャーをかける効果があります。

もう1つのメリットは、「時効の中断(更新)」という制度があること。

前述したように慰謝料請求権には時効がありますが、内容証明郵便を送付した場合はそこで時効を中断させることができます。それから6か月以内に慰謝料請求の権利を行使すれば時効の算定期間はリセットされ、時効を1から再スタートさせることができます。

内容証明郵便のデメリットは、一度発送すると誤りがあっても訂正できないことや、どの郵便局でも取り扱っているわけではなく、各市町村の中央郵便局など大きな郵便局に限られている点です。

裁判による請求 

口頭や書面での交渉が成立しなった場合は、裁判所に慰謝料請求訴訟を起こすことになります。慰謝料の裁判は民事なので弁護士を立てずに本人訴訟が可能ですが、弁護士に代理人として一任するのが一般的です。

裁判で争うメリットは、慰謝料が適正な金額であることや、相手が慰謝料請求に応じない場合でも強制的に支払いを要求することができる点です。

デメリットは、弁護士を立てる場合は高額な費用がかかることが挙げられます。不倫相手にとってのデメリットは、最初に訴状が自宅に送られてくるため、家族に不倫がばれる心配があることでしょう。

なお、不倫慰謝料で裁判にまで至る案件は全体の1~2割程度です。

また、判決が出るまで戦うことは少なく、裁判の途中で和解が成立するケースがほとんどです。和解調書に定められている慰謝料を期日までに納めることで、慰謝料請求訴訟は終了となります。

※裁判に訴訟を起こす前に、家庭裁判所で調停委員と裁判官が関与する民事調停を行うケースもあります。

請求する場合、離婚は不可避?

請求する場合、離婚は不可避?

慰謝料を請求された側(不倫相手)としては、離婚をしないのに慰謝料を取るのは納得できない、と思う人もいるようです。

しかし、不倫の慰謝料は「不貞行為をされて精神的苦痛を受けた」ことに対する損害賠償金ですから、請求しても離婚はせずに婚姻関係を継続することができます。

ただ、離婚しない場合は、離婚した場合に比べると慰謝料の金額が低くなるのが通例です。

【まとめ】不貞の証拠を集めるために専門家の手を借りよう

【まとめ】不貞の証拠を集めるために専門家の手を借りよう

浮気や不倫で慰謝料を請求する方法について紹介してきましたが、どんな方法であれ、請求するには「不貞の証拠」が必要です。

しかし、自分で証拠を集める方法は思っている以上に困難です。個人のプライバシーにかかわることだけに、守らなければならない法律・ルールがたくさんあるからです。

確かな証拠を押さえるために探偵などに依頼することができますが、中にはプロの探偵とは言えない悪質な業者も存在します。

そうしたリスクを避け、信頼できる調査会社や弁護士にお願いしたいという方は、NPO法人よつばにご相談することをおすすめします。

NPO法人よつばでは、専門のカウンセラーが不倫問題の解決に向けて悩み相談に応じるとともに、信頼できる調査会社や弁護士の紹介も行っています。いずれも無料相談ですので気軽にご利用ください。

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この記事では浮気・不倫などの不貞行為に対して慰謝料を請求できる場合と、できない場合について紹介しています。
浮気・不倫で慰謝料を請求「できる場合」と「できない場合」の基準を解説
浮気・不倫で慰謝料を請求「できる場合」と「できない場合」の基準を解説

不貞行為に対する慰謝料の請求が可能・不可能な場合を紹介

慰謝料とは、他者の行為によって「精神的苦痛」を受けた際に発生する損害賠償金のことです。配偶者のDVやモラハラ、浮気、不倫などが原因で心をひどく傷つけられたときは、お金で償ってもらうことができます。

しかし、浮気や不倫はどのようなケースでも慰謝料を請求できるというわけではありません。

ここでは、配偶者の浮気・不倫で慰謝料請求を考えている方のために、請求が可能な場合と不可能な場合を解説し、請求の方法についてもわかりやすく紹介していきます。

目次

なぜ浮気・不倫で慰謝料を請求できるの?

なぜ浮気・不倫で慰謝料を請求できるの?

夫婦関係は生活を共にするだけでも成立しますが、平穏な夫婦生活を維持するには継続的な性的結びつきも重要な要素であるため、結婚した二人には配偶者以外の異性と性交渉をしないという義務(貞操義務)が課せられています。

浮気や不倫はこの貞操義務に違反する行為であり、不法行為に当たります(民法709条)。

法律上は「不倫」という言葉はなく、貞操義務に違反する浮気・不倫は「不貞行為」と呼ばれています。この不貞行為によって、平穏な生活を送る権利を侵害されて精神的苦痛を受けた場合、権利を侵害した側は慰謝料を支払う義務を負うことになるのです(民法710条)。

1回だけの不貞行為でも、精神的苦痛が大きければ請求することができ、状況によっては高額の慰謝料を請求できるケースもあります。

また、慰謝料の請求は、婚姻届を提出した法律婚だけでなく、事実婚や同性婚の場合でも認められるようになりました。

ちなみに、生活を共にしていない恋人関係の場合は、貞操を守る義務はないため、相手が浮気をしても慰謝料の請求はできません。

民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

不貞行為でも絶対できるとは限らない

不貞行為でも絶対できるとは限らない

配偶者の不貞行為が発覚して精神的苦痛を受けた側は、どのような場合でも慰謝料を請求できるかというとそうではありません。では、請求が認められるケースと認められないケースに分けて見ていきましょう。

慰謝料請求ができる場合

  1. 不倫相手が既婚者であることがわかっていながら自由意思で性的関係を結んだ
  2. 相手方が既婚者であることを把握できる状況にありながら、把握せずに性的関係を結んだ
  3. 相手方は 既婚者だが婚姻関係が破綻していると思い込み、注意を払えば破綻していないことに気づくことができたにも関わらず、性的関係を持った
  4. 円満だった夫婦が、配偶者の不貞行為によって夫婦関係が悪化し、離婚に至ってしまった
  5. 配偶者と不倫相手に肉体関係はないが、夫婦の平穏な生活を脅かし破壊する恐れがあるほど親密な関係にあった

慰謝料請求ができない場合

  1. 相手方が配偶者を独身だと過失なく信じていた
  2. 夫婦仲が悪化し、すでに別居していた
  3. 出会い系サイトやマッチングアプリなどで知り合い、既婚かどうかわからないまま肉体関係を結んだ
  4. すでに精神的な損害を償うだけの十分な慰謝料を受け取っている場合
  5. 時効が成立している場合(時効については後述)

故意または過失によるかどうかがカギ

以上のように、慰謝料請求ができるのは、浮気や不倫をした側に「故意」または「過失」があった場合に限られます。

故意とは「わざとすること」といった意味で、浮気や不倫の相手が既婚者であることを知りながら性行為に及ぶことです。もう1つの「過失」は、注意すれば回避できたにもかかわらず注意を怠ったことを指し、「落ち度」と言い換えることもできます。

もし、知り合った異性が結婚指輪をしていない、家庭や子供の話は一切しない、本人も独身と紹介したとすれば、相手は独身者と信じてしまうでしょう。

このように、相手が既婚者とは知らず、また、知らないことが不注意だとも言い切れないような場合は、民法709条の「故意・過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は~」の「故意・過失」とは認められないため、不法行為は成立しません。

つまり、慰謝料を請求しても相手には支払いの義務が発生しないということを心得ておきましょう。

浮気・不倫の慰謝料の相場は?

浮気・不倫の慰謝料の相場は?

慰謝料を請求するのは不倫をされた側ですから、自分の気が済む金額を要求しても請求そのものは有効です。しかし、高額すぎて相手側が承諾できなければ支払いは期待できません。

慰謝料の金額は、「有責行為(不貞や暴力など離婚の原因となる行為)の度合い」「婚姻期間」「婚姻生活の実情」「子供の有無」「収入」「負債」「関係修復の努力の有無」のほか、ノイローゼやうつ病など有責行為によって発症した疾患の有無、不倫相手の妊娠の有無なども考慮して決められるのが一般的です。

不倫慰謝料の金額は、離婚まで行かない場合は50万~150万程度、離婚した場合は150万~300万円が相場とされています。

これはあくまでも相場で、不倫した側に支払い能力があれば相場を大きく上回る金額を請求することも可能です。

慰謝料はだれに請求すればいい?

慰謝料はだれに請求すればいい?

不倫の慰謝料を請求する先は、配偶者(パートナー)のみ、配偶者と不倫相手の両者、不倫相手のみの3パターンが考えられます。

配偶者(パートナー)に請求する

不倫相手が配偶者のことを独身と信じて肉体関係を持っていた場合は慰謝料の請求はできないので、配偶者(パートナー)だけに請求することになります。

配偶者(パートナー)と不倫相手に請求する

配偶者と離婚する決意をしている人の場合は、不倫関係にある二人に請求するケースが多く見られます。既婚者と知っていて不倫関係にあるのは共同不法行為にあたり、同じように慰謝料の支払い義務を負うからです。

仮に慰謝料は200万円と決まった場合、それぞれに全額の200万円を請求することができます。請求された側は、責任の負担割合に応じて支払うことになります。負担割合は二人の立場や状況によって違ってきますが、負担割合を50:50とすれば一人100万円です。

もし、一方が全額200万円を支払った場合は、もう一方に負担分を超えた金額(この例では100万円)を要求することも可能です。これを「求償権の行使」と言います。

不倫相手のみに請求する

配偶者との離婚を前提としない場合は、慰謝料は不倫相手一人に請求することになります。生計を一にする夫婦間で金銭のやり取りは意味がないことや、夫婦関係の立て直しにわだかまりを残さないようにするためです。

不倫相手のみに請求する場合は、どちらから性的関係を持つよう働きかけたか、また、不貞を継続させるためにどちらが積極的であったかということが請求金額にも影響します。

そうした点も客観的に把握して金額を決めないと、相手から「事実と異なる」と反論され、支払いを拒否されることがあります。

不貞行為(浮気・不倫)にも時効がある

不貞行為(浮気・不倫)にも時効がある

損害賠償金には請求期限が定められており、それを過ぎる時効が完成して請求権が消滅します。不倫慰謝料の場合も同じで、下記のいずれかに該当するときは時効となります。

  1. 不貞行為の事実を知ってから3年間、慰謝料請求権を行使しなかった
  2. 不貞行為が始まった時から20年間、慰謝料請求権を行使しなかった

不貞行為の時効は3年間が原則。浮気・不倫の事実を知った時から3年の間、慰謝料の請求をしなかった場合は時効が完成し、それ以降は請求することができなくなります。

しかし、不倫に気づかなかったり、気づいても相手の名前や住所など身元を特定できない場合は、不倫が始まってから20年以内であれば請求することができます。これを除斥期間といい、被害者に不利益が生じないように設けられた期間です。

また、不倫が原因で離婚に至ったときは、不倫の事実を知ってから3年以上経過していても、離婚から3年以内であれば慰謝料を請求することができます。一方の不倫相手に対しては、離婚後に慰謝料を請求することはできません。

ただ、離婚後に慰謝料を請求しても、元配偶者がそれを承諾して支払ってくれる確率はかなり低いというのが実情です。

慰謝料の請求の仕方

慰謝料の請求の仕方

慰謝料の請求の仕方には、当事者同士の話し合い、内容証明郵便による請求、弁護士に代理交渉してもらう裁判があります。それぞれのメリット・デメリットを挙げてみます。

当事者同士の話し合い(直接交渉)

不倫相手と口頭や電話で話し合うというケースは多いものです。直接交渉のメリットは、相手にじっくり考える時間や責任逃れのための言葉選びをする時間を与えないため、それだけ早く解決に向かうことが可能な点です。

デメリットは、自分にも考える時間は与えられないため、余計なことを言ったりして交渉失敗に終わる恐れがあること。また、あとで「言った」「言わない」の水掛け論になりやすい点も挙げられます。

内容証明郵便による請求

内容証明は、どんな内容の文書を、いつ、だれが、だれに送ったかを郵便局が証明するサービスです。メリットは、口頭の交渉でありがちな「言った、言わない」を回避できる点です。

さらに、内容証明郵便そのものに法的拘束力はないものの、受け取った側に「内容証明を送るとは、相手は裁判も辞さないつもりか」といった本気度を感じさせ、心理的なプレッシャーをかける効果があります。

もう1つのメリットは、「時効の中断(更新)」という制度があること。

前述したように慰謝料請求権には時効がありますが、内容証明郵便を送付した場合はそこで時効を中断させることができます。それから6か月以内に慰謝料請求の権利を行使すれば時効の算定期間はリセットされ、時効を1から再スタートさせることができます。

内容証明郵便のデメリットは、一度発送すると誤りがあっても訂正できないことや、どの郵便局でも取り扱っているわけではなく、各市町村の中央郵便局など大きな郵便局に限られている点です。

裁判による請求 

口頭や書面での交渉が成立しなった場合は、裁判所に慰謝料請求訴訟を起こすことになります。慰謝料の裁判は民事なので弁護士を立てずに本人訴訟が可能ですが、弁護士に代理人として一任するのが一般的です。

裁判で争うメリットは、慰謝料が適正な金額であることや、相手が慰謝料請求に応じない場合でも強制的に支払いを要求することができる点です。

デメリットは、弁護士を立てる場合は高額な費用がかかることが挙げられます。不倫相手にとってのデメリットは、最初に訴状が自宅に送られてくるため、家族に不倫がばれる心配があることでしょう。

なお、不倫慰謝料で裁判にまで至る案件は全体の1~2割程度です。

また、判決が出るまで戦うことは少なく、裁判の途中で和解が成立するケースがほとんどです。和解調書に定められている慰謝料を期日までに納めることで、慰謝料請求訴訟は終了となります。

※裁判に訴訟を起こす前に、家庭裁判所で調停委員と裁判官が関与する民事調停を行うケースもあります。

請求する場合、離婚は不可避?

請求する場合、離婚は不可避?

慰謝料を請求された側(不倫相手)としては、離婚をしないのに慰謝料を取るのは納得できない、と思う人もいるようです。

しかし、不倫の慰謝料は「不貞行為をされて精神的苦痛を受けた」ことに対する損害賠償金ですから、請求しても離婚はせずに婚姻関係を継続することができます。

ただ、離婚しない場合は、離婚した場合に比べると慰謝料の金額が低くなるのが通例です。

【まとめ】不貞の証拠を集めるために専門家の手を借りよう

【まとめ】不貞の証拠を集めるために専門家の手を借りよう

浮気や不倫で慰謝料を請求する方法について紹介してきましたが、どんな方法であれ、請求するには「不貞の証拠」が必要です。

しかし、自分で証拠を集める方法は思っている以上に困難です。個人のプライバシーにかかわることだけに、守らなければならない法律・ルールがたくさんあるからです。

確かな証拠を押さえるために探偵などに依頼することができますが、中にはプロの探偵とは言えない悪質な業者も存在します。

そうしたリスクを避け、信頼できる調査会社や弁護士にお願いしたいという方は、NPO法人よつばにご相談することをおすすめします。

NPO法人よつばでは、専門のカウンセラーが不倫問題の解決に向けて悩み相談に応じるとともに、信頼できる調査会社や弁護士の紹介も行っています。いずれも無料相談ですので気軽にご利用ください。

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