1. 離婚に必要な手続きと流れを解説!注意点や必要な書類とは
離婚に必要な手続きと流れを解説!注意点や必要な書類とは
離婚に必要な手続きと流れを解説!注意点や必要な書類とは

離婚手続きの4つの方法と重要なポイントを紹介

離婚の手続きには大きく分けて4つの方法があります。4つの手続きのどれを選んでもよいというわけではなく、協議離婚から始まって、そこで離婚が成立しなければ次の調停離婚に進むというように段階を踏んでいきます。

ここでは、離婚届を出す前に準備しておきたいことと、4つの手続きの流れについて解説しています。離婚してから後悔することのないように、手続きの重要なポイントを押さえておきましょう。

目次

離婚を成立させるための手続きには4つの方法がある

離婚を成立させるための手続きには4つの方法がある

婚姻届を役所に提出して法律上の夫婦と認められた二人は、離婚するときも離婚届の提出が義務づけられています(民法第764条,戸籍法第76条,第77条)。離婚は自分一人の意思でできるものではなく、相手の合意のもとに離婚を成立させる必要があります。

離婚の手続きには、主に下記の4つの方法があります。

協議離婚:

夫婦二人で話し合って離婚に合意する方法で、日本での離婚全体の90%を占めています。

調停離婚:

話し合いでは合意に至らず、家庭裁判所で調停委員に間に入ってもらって合意を目指す方法。 

審判離婚:

調停離婚が不成立だった場合に、裁判所が双方の事情を考慮したうえで離婚が相当と審判(決定)する方法。この審判離婚はごくまれなケースで、全体の1%にも満たないといわれます。

裁判離婚:

いずれの方法でも合意に至らない場合の最終手段。離婚の訴えを起こした方が原告、訴えられた方が被告となり、裁判官が双方の主張や証拠に基づいて離婚の可否を審理し、判決を下します。

それぞれの離婚手続きの仕方や流れついては、後の項で詳しく解説しています。

届を出す前に整理しておきたいこと

届を出す前に整理しておきたいこと

離婚を決意するほど夫婦関係が悪化している場合は、別れることばかり考えてしまいがちです。しかし、協議離婚をする場合でも話し合う必要があるのは離婚後のこと。別れた後の生活を見据え、離婚の条件を整理して相手に提示する必要があります。

離婚の条件を明確にする

離婚の条件は、未成年の子供ありの場合と子供なしの場合では違ってきます。ここでは子供ありの夫婦を例に、協議離婚をするにあたって整理しておく必要のあることをまとめてみます。

財産分与

夫婦で築いてきた財産は二人で分け合うことができます。折半が原則ですが、双方が納得できれば分割割合は自由に決められます。

財産分与の対象となるものは、預貯金、有価証券、不動産、家財道具、貴金属、自動車、積立型生命保険など。妻のへそくりやパートなどで働いて貯めたお金も財産分与の対象となります。

住宅ローンが残っている場合は、家の不動産価値がローン残高を上回れば売却して二人で分けることができます。ローン残高のほうが上回る場合は、以下の3つの方法があります。

  • 夫婦のどちらかが住み続けてローンを払っていく
  • 家を売却し、収益でローンを完済して残った分を折半する
  • 売却してもローンが残る場合は、借金として公平に負担する

この中で注意が必要なのは、どちらかが住み続ける場合です。

住宅ローンは名義人(債務者)がその家に住むことが条件となっているため、夫が名義人なのに妻が住み続ける場合は、契約違反として債権者(金融機関)から一括返済を求められることがあるからです。

妻が安心して住み続けるには住宅ローンの借り換えをする必要があります。

ローンの名義変更は基本的にはできないため、妻が新たに別の金融機関でロ―ンを組み、その借入金で夫名義のローンを完済し、新たなローンは妻が払い続けることになります。

慰謝料

離婚の慰謝料は、相手のDV(ドメスティックバイオレンス:暴力)やモラハラ(モラルハラスメント:精神的な虐待)、不倫や浮気、悪意の遺棄などで精神的苦痛を受けた場合に請求できる損害賠償です。

金額は婚姻期間や精神的苦痛の程度、夫婦関係修復の努力の有無などによって決定されますが、離婚に至った場合は50万~300万円が相場です。

なお、財産分与と慰謝料を区分せずに、「慰謝料的財産分与」としてまとめて請求する考えもあります。その点も二人で話し合って決めておく必要があります。

親権者権・養育費

親権とは子供を監護し、教育する権利のことで、どちらが親権者となるかを決める必要があります。親権者が未定のままでは離婚届を受理してもらえません。

親権を得なかった方(非親権者)は親権者に対して養育費を支払う義務を負います。

離婚の原因が親権者にあった場合でも養育費は子供を育てるための費用なので、非親権者は支払いを拒否することはできません。

支払期間は成人するまでが一般的ですが、高校卒業まで、大学卒業までとするなど、二人で話し合って決めることが多くなっています。

金額は子供の人数、年齢、非親権者の収入、親権者の収入などから決定され、子供の成長に応じて加算されるのが通例です。

養育費の相場は、非親権者の年収が400万円程度、親権者は専業主婦で無収入、子供が0~14歳ごろまでのケースで4万~6万円となっています。

養育費の適正金額を知りたい方は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考にするといいでしょう。

面会交流権

非親権者と子供が交流する権利を面会交流権といい、親だけの権利ではなく、子どもの権利でもあります。

非親権者が虐待などの問題行動を起こす恐れがある場合は拒否することができます。

そうした心配はなく、単に感情的に会わせたくないという場合は拒否し続けることは難しくなるでしょう。相手が家庭裁判所に面会交流の申し立てを行う可能性もあるからです。

なお、子供が会いたくないと言う場合は、子供の気持ちを最優先させ、会いたいという日が来るまで面会交流を中断することができます。

年金分割

年金分割とは、年金そのものを財産として分与するのではなく、婚姻期間中に納めた年金保険料を夫婦で納めたものとみなして年金納付記録を分割し、将来受け取る年金を分け合うというものです。

この年金分割は平成19年4月以降に離婚した人を対象とする新しい制度です。年金分割できるのは厚生年金(平成27年10月1日前の共済年金を含む)のみで、国民年金(基礎年金)の部分は対象外です。

無断で離婚届を出されないように「不受理申出」をしておく

「一方的に離婚届を出された」「偽造した離婚届を出された」といった実例はけっして少なくありません。離婚を切り出した方は離婚が法的に認められたことによって目的達成したため、態度を変えて離婚条件なども自分に有利になるように進めることがあります。

そうした不本意な事態を避けるために設けられているのが「不受理申出」という手続きです。不受理申出書はどこの市区町村役所の窓口でももらうことができます。必要事項を記入し、本人確認できる書類を添えて窓口に出向いて提出します。郵送はできません。

不受理申出に有効期限はなく、申出を取り下げるまでの間、申出人以外の人が提出する離婚届は受理されることがありません。

時間が経過して離婚に合意する場合は、不受理届のときと同様に「不受理申出の取下書」を市区町村役所に提出する必要があります。自分が離婚届を提出する場合は、受理された時点で「不受理申出」は失効します。

離婚届の流れと手続きの仕方

離婚届の流れと手続きの仕方

ここから「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の流れとそれぞれの手続きの仕方について詳しく見ていきましょう。

協議離婚の流れ

婚姻関係を解消する離婚には、戸籍をはじめ財産や子供の親権などの重要な変動が伴うもの。協議離婚は、そうした事柄について二人が条件を出し合い、双方が合意して契約を結ぶ方法です。

お互いに納得できることであれば、基本的にはどのような条件でも自由に決めることができます。

協議離婚は円満に解決できる方法ですが、取り決めた条件は口約束だけではなく、「離婚協議書」として記録しておくことも必要です。特に養育費などの支払いが滞るといった金銭面でのトラブルが起こりがちです。

離婚した後では話し合いも難しくなります。書面にしてさらに公正証書にしておけば法的拘束力も生まれるため、非親権者の給与や預貯金を差し押さえたりすることも可能になります。

書類を作成したらいよいよ離婚届に署名押印をして市区町村の役所に提出します。協議離婚の場合は成人2名の証人に署名・押印してもらう必要があるので、親族や友人に依頼するといいでしょう。

役所で離婚届が受理されれば離婚手続きは完了です。協議離婚は手続きが簡易で費用もかからない点が最大のメリットといえます。

なお、離婚して氏(苗字)を旧姓に戻す場合は、旧姓で離婚届けを出せば手続きをする必要はなく、自動的に旧姓に戻されます。

調停離婚の流れ

二人で協議しても合意に至らない場合があります。たとえば、法外な慰謝料を請求してくるとか、話し合いに応じる気がないといった場合です。

また、相手の暴力が怖いから会えないというケースもあります。

そのようなときは調停離婚に持ち込むことになります。調停離婚の流れは、下記のようなステップを踏むのが一般的です。

① 調停の申し立て:離婚を請求する側が相手の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類と費用(3,000円程度)を持参または郵送することで、調停申し立ての手続きがなされます。

② 調停期日:調停申し立てが受理されてから1~2か月後に第1回目の調停期日が指定されます。調停は約1か月間隔で複数回実施されるのが普通です。

③ 調停成立:合意に至ったときは、調停委員立ち会いのもとに調停調書に記載します。この調停調書には裁判所での訴訟の判決と同等の効力があります。

調停が行われる日は、夫婦は別々の控室で待機し、調停委員の呼び出しに応じて調停室に入ります。

夫婦が顔を合わせることはなく、2名の調停委員が夫婦それぞれから話を聞いて意見を調整していきます。1回の調停はおおむね2時間です。

条件の折り合いがついて合意に達すれば調停調書を作成してもらい、10日以内に調停調書の謄本と必要書類を役所に届け出ます。

これで手続きは終了ですが、調停離婚は申し立てから半年~1年、長くなると数年を要するケースもあり、その点がデメリットです。

審判離婚の流れ

家庭裁判所での調停でほぼ離婚に合意していたものの、条件の一部に合意できなかった、あるいは一方が入院中で合意できなかったなどやむを得ない事情がある場合に、裁判所が調停に代わる審判を下すことで成立する離婚を審判離婚といいます。

あくまでも裁判所が判断することなので、当事者から審判離婚を希望することはできても、申し立てることはできないことになっています。

審判離婚のメリットとしては、費用も日数もかかる裁判離婚をしなくてすむことです。しかし、裁判所の審判に夫婦のどちらかが異議を申し立てればその審判は無効になります。

異議申立書を提出する必要はありますが、理由は問われないため無効にするのは簡単です。審判離婚は離婚手続き全体の1%未満と少ないのも、特殊な状況に対応するための制度であり、法的効力も弱いことが影響していると思われます。

裁判離婚の流れ

協議離婚が成立せず、調停離婚および審判離婚へと進んでも一方が強硬に離婚を拒否する場合は、最終手段として裁判離婚に至ることになります。

協議離婚から審判離婚までは離婚の理由は必要ありません。しかし、裁判では法律で定められた離婚の理由「法定離婚事由」のいずれかに該当することが必要になります(下表参照)。

裁判で法定離婚事由に該当すると判断された場合は、どれほど強く拒否しても離婚を認める判決が下される確率が高くなります。

法定離婚事由
1 不貞行為(配偶者が他の異性と性的関係を持つなどの不貞行為がある場合)
2 悪意の遺棄(生活費を入れない、勝手に別居するなど、民法に定められた協力・扶助・同居の義務を果たさない場合)
3 3年以上の生死不明(配偶者の生存を確認してから3年以上経過して生死が不明の場合)
4 強度の精神病(配偶者が夫婦関係を維持できないほど強度の精神病にかかってしまった場合)
5 その他婚姻生活を継続しがたい重大な事由(日常的なDVやモラハラ、アルコール・薬物・ギャンブル依存、セックスレス、行き過ぎた宗教活動など

裁判で離婚の判決が確定した場合は、財産分与や養育費その他の条件について合意できなかったときでも、判決によって決定されます。判決には法的拘束力がありますから、相手が応じなかった場合は強制執行の手続をとることが可能です。この点が裁判離婚のメリットです。

離婚を認める判決が出たら、その日から10日以内に本籍地または住所地の市区町村役所に、裁判所から交付された判決謄本と判決確定証明書を添えて離婚の届け出をします。

和解離婚もある

裁判離婚では、判決を待たずに途中で和解することができます。裁判官が和解の勧告をし、二人が合意すれば和解が成立してその日に裁判離婚の手続きは終了します。これを和解離婚といい、裁判離婚の50%近くを占めています。

裁判離婚というと、もはや二人に話し合う余地はないという決裂した状況をイメージしますが、実際はお互いに譲歩し合って訴訟を終了させる和解という方法を選択することもできるのです。和解が成立した際に作成される和解調書にも判決と同様の効力があります。

和解離婚のメリットは、なんといっても裁判が早く終了すること。判決まで待つ裁判離婚の場合は1年以上、長引くと2年以上に及ぶこともあります。長びけばそれだけ弁護士費用も必要になりますから、和解は費用の面でもメリットが大きいといえます。

自分の権利を無駄にしないためにも弁護士に相談を

自分の権利を無駄にしないためにも弁護士に相談を

離婚の原因は配偶者の不貞行為というケースが多いものです。このような場合はつい感情的になって離婚を切り出してしまい、離婚後に「あの時もっと冷静に考えるべきだった」と後悔することに。

夫婦には法律で定められた義務と権利があります。たとえば、二人で築いた財産があれば財産分与という権利があります。離婚後に幸せな生活を送るためには、そうした権利を最大限に行使すべきです。

法的なことはよくわからないという方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。弁護士に相談するのはハードルが高いと思うのであれば、まず「NPO法人よつば」の無料相談を利用してみましょう。

NPO法人よつばでは、離婚に関する悩みを持っている方に専門のカウンセラーがアドバイスをするだけでなく、離婚に強い信頼できる弁護士の紹介も行っています。

まとめ

まとめ

今回は離婚手続きの方法について解説してきました。協議離婚以外はさまざまな決まりがあり、時間も要します。自分に不利にならないように進めるには事前の準備が不可欠です。証拠が必要なケースではきちんとした証拠をそろえなければなりません。

手抜かりなく準備を整えるとなると一人では大変です。なるべく負担を軽くするためにもぜひNPO法人よつばに相談してみてください。

無料相談は電話やメールのほか、距離的にご来所が可能な方には直接対面による相談にも応じています。

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今回は離婚を成立させるための4種類の手続きの内容とその流れについて紹介します。
離婚に必要な手続きと流れを解説!注意点や必要な書類とは
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離婚手続きの4つの方法と重要なポイントを紹介

離婚の手続きには大きく分けて4つの方法があります。4つの手続きのどれを選んでもよいというわけではなく、協議離婚から始まって、そこで離婚が成立しなければ次の調停離婚に進むというように段階を踏んでいきます。

ここでは、離婚届を出す前に準備しておきたいことと、4つの手続きの流れについて解説しています。離婚してから後悔することのないように、手続きの重要なポイントを押さえておきましょう。

目次

離婚を成立させるための手続きには4つの方法がある

離婚を成立させるための手続きには4つの方法がある

婚姻届を役所に提出して法律上の夫婦と認められた二人は、離婚するときも離婚届の提出が義務づけられています(民法第764条,戸籍法第76条,第77条)。離婚は自分一人の意思でできるものではなく、相手の合意のもとに離婚を成立させる必要があります。

離婚の手続きには、主に下記の4つの方法があります。

協議離婚:

夫婦二人で話し合って離婚に合意する方法で、日本での離婚全体の90%を占めています。

調停離婚:

話し合いでは合意に至らず、家庭裁判所で調停委員に間に入ってもらって合意を目指す方法。 

審判離婚:

調停離婚が不成立だった場合に、裁判所が双方の事情を考慮したうえで離婚が相当と審判(決定)する方法。この審判離婚はごくまれなケースで、全体の1%にも満たないといわれます。

裁判離婚:

いずれの方法でも合意に至らない場合の最終手段。離婚の訴えを起こした方が原告、訴えられた方が被告となり、裁判官が双方の主張や証拠に基づいて離婚の可否を審理し、判決を下します。

それぞれの離婚手続きの仕方や流れついては、後の項で詳しく解説しています。

届を出す前に整理しておきたいこと

届を出す前に整理しておきたいこと

離婚を決意するほど夫婦関係が悪化している場合は、別れることばかり考えてしまいがちです。しかし、協議離婚をする場合でも話し合う必要があるのは離婚後のこと。別れた後の生活を見据え、離婚の条件を整理して相手に提示する必要があります。

離婚の条件を明確にする

離婚の条件は、未成年の子供ありの場合と子供なしの場合では違ってきます。ここでは子供ありの夫婦を例に、協議離婚をするにあたって整理しておく必要のあることをまとめてみます。

財産分与

夫婦で築いてきた財産は二人で分け合うことができます。折半が原則ですが、双方が納得できれば分割割合は自由に決められます。

財産分与の対象となるものは、預貯金、有価証券、不動産、家財道具、貴金属、自動車、積立型生命保険など。妻のへそくりやパートなどで働いて貯めたお金も財産分与の対象となります。

住宅ローンが残っている場合は、家の不動産価値がローン残高を上回れば売却して二人で分けることができます。ローン残高のほうが上回る場合は、以下の3つの方法があります。

  • 夫婦のどちらかが住み続けてローンを払っていく
  • 家を売却し、収益でローンを完済して残った分を折半する
  • 売却してもローンが残る場合は、借金として公平に負担する

この中で注意が必要なのは、どちらかが住み続ける場合です。

住宅ローンは名義人(債務者)がその家に住むことが条件となっているため、夫が名義人なのに妻が住み続ける場合は、契約違反として債権者(金融機関)から一括返済を求められることがあるからです。

妻が安心して住み続けるには住宅ローンの借り換えをする必要があります。

ローンの名義変更は基本的にはできないため、妻が新たに別の金融機関でロ―ンを組み、その借入金で夫名義のローンを完済し、新たなローンは妻が払い続けることになります。

慰謝料

離婚の慰謝料は、相手のDV(ドメスティックバイオレンス:暴力)やモラハラ(モラルハラスメント:精神的な虐待)、不倫や浮気、悪意の遺棄などで精神的苦痛を受けた場合に請求できる損害賠償です。

金額は婚姻期間や精神的苦痛の程度、夫婦関係修復の努力の有無などによって決定されますが、離婚に至った場合は50万~300万円が相場です。

なお、財産分与と慰謝料を区分せずに、「慰謝料的財産分与」としてまとめて請求する考えもあります。その点も二人で話し合って決めておく必要があります。

親権者権・養育費

親権とは子供を監護し、教育する権利のことで、どちらが親権者となるかを決める必要があります。親権者が未定のままでは離婚届を受理してもらえません。

親権を得なかった方(非親権者)は親権者に対して養育費を支払う義務を負います。

離婚の原因が親権者にあった場合でも養育費は子供を育てるための費用なので、非親権者は支払いを拒否することはできません。

支払期間は成人するまでが一般的ですが、高校卒業まで、大学卒業までとするなど、二人で話し合って決めることが多くなっています。

金額は子供の人数、年齢、非親権者の収入、親権者の収入などから決定され、子供の成長に応じて加算されるのが通例です。

養育費の相場は、非親権者の年収が400万円程度、親権者は専業主婦で無収入、子供が0~14歳ごろまでのケースで4万~6万円となっています。

養育費の適正金額を知りたい方は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考にするといいでしょう。

面会交流権

非親権者と子供が交流する権利を面会交流権といい、親だけの権利ではなく、子どもの権利でもあります。

非親権者が虐待などの問題行動を起こす恐れがある場合は拒否することができます。

そうした心配はなく、単に感情的に会わせたくないという場合は拒否し続けることは難しくなるでしょう。相手が家庭裁判所に面会交流の申し立てを行う可能性もあるからです。

なお、子供が会いたくないと言う場合は、子供の気持ちを最優先させ、会いたいという日が来るまで面会交流を中断することができます。

年金分割

年金分割とは、年金そのものを財産として分与するのではなく、婚姻期間中に納めた年金保険料を夫婦で納めたものとみなして年金納付記録を分割し、将来受け取る年金を分け合うというものです。

この年金分割は平成19年4月以降に離婚した人を対象とする新しい制度です。年金分割できるのは厚生年金(平成27年10月1日前の共済年金を含む)のみで、国民年金(基礎年金)の部分は対象外です。

無断で離婚届を出されないように「不受理申出」をしておく

「一方的に離婚届を出された」「偽造した離婚届を出された」といった実例はけっして少なくありません。離婚を切り出した方は離婚が法的に認められたことによって目的達成したため、態度を変えて離婚条件なども自分に有利になるように進めることがあります。

そうした不本意な事態を避けるために設けられているのが「不受理申出」という手続きです。不受理申出書はどこの市区町村役所の窓口でももらうことができます。必要事項を記入し、本人確認できる書類を添えて窓口に出向いて提出します。郵送はできません。

不受理申出に有効期限はなく、申出を取り下げるまでの間、申出人以外の人が提出する離婚届は受理されることがありません。

時間が経過して離婚に合意する場合は、不受理届のときと同様に「不受理申出の取下書」を市区町村役所に提出する必要があります。自分が離婚届を提出する場合は、受理された時点で「不受理申出」は失効します。

離婚届の流れと手続きの仕方

離婚届の流れと手続きの仕方

ここから「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の流れとそれぞれの手続きの仕方について詳しく見ていきましょう。

協議離婚の流れ

婚姻関係を解消する離婚には、戸籍をはじめ財産や子供の親権などの重要な変動が伴うもの。協議離婚は、そうした事柄について二人が条件を出し合い、双方が合意して契約を結ぶ方法です。

お互いに納得できることであれば、基本的にはどのような条件でも自由に決めることができます。

協議離婚は円満に解決できる方法ですが、取り決めた条件は口約束だけではなく、「離婚協議書」として記録しておくことも必要です。特に養育費などの支払いが滞るといった金銭面でのトラブルが起こりがちです。

離婚した後では話し合いも難しくなります。書面にしてさらに公正証書にしておけば法的拘束力も生まれるため、非親権者の給与や預貯金を差し押さえたりすることも可能になります。

書類を作成したらいよいよ離婚届に署名押印をして市区町村の役所に提出します。協議離婚の場合は成人2名の証人に署名・押印してもらう必要があるので、親族や友人に依頼するといいでしょう。

役所で離婚届が受理されれば離婚手続きは完了です。協議離婚は手続きが簡易で費用もかからない点が最大のメリットといえます。

なお、離婚して氏(苗字)を旧姓に戻す場合は、旧姓で離婚届けを出せば手続きをする必要はなく、自動的に旧姓に戻されます。

調停離婚の流れ

二人で協議しても合意に至らない場合があります。たとえば、法外な慰謝料を請求してくるとか、話し合いに応じる気がないといった場合です。

また、相手の暴力が怖いから会えないというケースもあります。

そのようなときは調停離婚に持ち込むことになります。調停離婚の流れは、下記のようなステップを踏むのが一般的です。

① 調停の申し立て:離婚を請求する側が相手の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類と費用(3,000円程度)を持参または郵送することで、調停申し立ての手続きがなされます。

② 調停期日:調停申し立てが受理されてから1~2か月後に第1回目の調停期日が指定されます。調停は約1か月間隔で複数回実施されるのが普通です。

③ 調停成立:合意に至ったときは、調停委員立ち会いのもとに調停調書に記載します。この調停調書には裁判所での訴訟の判決と同等の効力があります。

調停が行われる日は、夫婦は別々の控室で待機し、調停委員の呼び出しに応じて調停室に入ります。

夫婦が顔を合わせることはなく、2名の調停委員が夫婦それぞれから話を聞いて意見を調整していきます。1回の調停はおおむね2時間です。

条件の折り合いがついて合意に達すれば調停調書を作成してもらい、10日以内に調停調書の謄本と必要書類を役所に届け出ます。

これで手続きは終了ですが、調停離婚は申し立てから半年~1年、長くなると数年を要するケースもあり、その点がデメリットです。

審判離婚の流れ

家庭裁判所での調停でほぼ離婚に合意していたものの、条件の一部に合意できなかった、あるいは一方が入院中で合意できなかったなどやむを得ない事情がある場合に、裁判所が調停に代わる審判を下すことで成立する離婚を審判離婚といいます。

あくまでも裁判所が判断することなので、当事者から審判離婚を希望することはできても、申し立てることはできないことになっています。

審判離婚のメリットとしては、費用も日数もかかる裁判離婚をしなくてすむことです。しかし、裁判所の審判に夫婦のどちらかが異議を申し立てればその審判は無効になります。

異議申立書を提出する必要はありますが、理由は問われないため無効にするのは簡単です。審判離婚は離婚手続き全体の1%未満と少ないのも、特殊な状況に対応するための制度であり、法的効力も弱いことが影響していると思われます。

裁判離婚の流れ

協議離婚が成立せず、調停離婚および審判離婚へと進んでも一方が強硬に離婚を拒否する場合は、最終手段として裁判離婚に至ることになります。

協議離婚から審判離婚までは離婚の理由は必要ありません。しかし、裁判では法律で定められた離婚の理由「法定離婚事由」のいずれかに該当することが必要になります(下表参照)。

裁判で法定離婚事由に該当すると判断された場合は、どれほど強く拒否しても離婚を認める判決が下される確率が高くなります。

法定離婚事由
1 不貞行為(配偶者が他の異性と性的関係を持つなどの不貞行為がある場合)
2 悪意の遺棄(生活費を入れない、勝手に別居するなど、民法に定められた協力・扶助・同居の義務を果たさない場合)
3 3年以上の生死不明(配偶者の生存を確認してから3年以上経過して生死が不明の場合)
4 強度の精神病(配偶者が夫婦関係を維持できないほど強度の精神病にかかってしまった場合)
5 その他婚姻生活を継続しがたい重大な事由(日常的なDVやモラハラ、アルコール・薬物・ギャンブル依存、セックスレス、行き過ぎた宗教活動など

裁判で離婚の判決が確定した場合は、財産分与や養育費その他の条件について合意できなかったときでも、判決によって決定されます。判決には法的拘束力がありますから、相手が応じなかった場合は強制執行の手続をとることが可能です。この点が裁判離婚のメリットです。

離婚を認める判決が出たら、その日から10日以内に本籍地または住所地の市区町村役所に、裁判所から交付された判決謄本と判決確定証明書を添えて離婚の届け出をします。

和解離婚もある

裁判離婚では、判決を待たずに途中で和解することができます。裁判官が和解の勧告をし、二人が合意すれば和解が成立してその日に裁判離婚の手続きは終了します。これを和解離婚といい、裁判離婚の50%近くを占めています。

裁判離婚というと、もはや二人に話し合う余地はないという決裂した状況をイメージしますが、実際はお互いに譲歩し合って訴訟を終了させる和解という方法を選択することもできるのです。和解が成立した際に作成される和解調書にも判決と同様の効力があります。

和解離婚のメリットは、なんといっても裁判が早く終了すること。判決まで待つ裁判離婚の場合は1年以上、長引くと2年以上に及ぶこともあります。長びけばそれだけ弁護士費用も必要になりますから、和解は費用の面でもメリットが大きいといえます。

自分の権利を無駄にしないためにも弁護士に相談を

自分の権利を無駄にしないためにも弁護士に相談を

離婚の原因は配偶者の不貞行為というケースが多いものです。このような場合はつい感情的になって離婚を切り出してしまい、離婚後に「あの時もっと冷静に考えるべきだった」と後悔することに。

夫婦には法律で定められた義務と権利があります。たとえば、二人で築いた財産があれば財産分与という権利があります。離婚後に幸せな生活を送るためには、そうした権利を最大限に行使すべきです。

法的なことはよくわからないという方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。弁護士に相談するのはハードルが高いと思うのであれば、まず「NPO法人よつば」の無料相談を利用してみましょう。

NPO法人よつばでは、離婚に関する悩みを持っている方に専門のカウンセラーがアドバイスをするだけでなく、離婚に強い信頼できる弁護士の紹介も行っています。

まとめ

まとめ

今回は離婚手続きの方法について解説してきました。協議離婚以外はさまざまな決まりがあり、時間も要します。自分に不利にならないように進めるには事前の準備が不可欠です。証拠が必要なケースではきちんとした証拠をそろえなければなりません。

手抜かりなく準備を整えるとなると一人では大変です。なるべく負担を軽くするためにもぜひNPO法人よつばに相談してみてください。

無料相談は電話やメールのほか、距離的にご来所が可能な方には直接対面による相談にも応じています。

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