
離婚前の「別居」という選択をする場合には事前にしっかり準備をしておくことが大切
別居にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
すぐに離婚せず、婚姻関係を継続しながら離れて暮らす「別居」という選択をする場合には事前にしっかり準備をしておくことをおすすめします。
一緒に暮らしたくないからといってパートナーに相談もせず、勝手に家を出てしまうとトラブルにつながる恐れがありますから注意が必要です。
この記事では別居のメリットとデメリット、また別居を始める前に準備しておくことや注意点、別居の進め方などをくわしく解説します。
別居をお考えの方はぜひ最後まで読んでみてください。
別居すると離婚が認められやすいって本当?

別居すると離婚が認められやすい、という話はよく耳にしますが実際のところはどうなのでしょうか。
民法上では「婚姻を継続し難い理由」がある場合に離婚が請求できるとされており、その判断要素としてまず考慮されるのが「別居の有無と期間」です。
夫婦には特別な場合を除き「同居の義務」がありますから、別居している夫婦は夫婦関係が破綻していると判断され、離婚が認められやすくなります。
離婚が成立する別居期間(年数)とは
法律上、離婚が成立する別居期間(年数)はとくに決まっていません。
離婚を巡る裁判では、裁判官が「これだけ別居しているなら夫婦関係を継続するのは困難だろう」と判断すれば離婚が認められます。
これは単に何年という長さだけでなく、別居に至った経緯や別居後の夫婦の関係などにより異なります。
一般的にとくに離婚事由がない場合は5~10年別居すれば離婚が認められるとされていますが、ケースバイケースと考えた方が良いでしょう。
配偶者が不倫(不貞行為)をした場合には早期に離婚が認められることもありますし、有責配偶者(不倫した側)の場合は相場よりずっと長くなります。
別居を実行するタイミング
別居を実行するタイミングはさまざまですが、離婚を考えた時に前段階として別居を実行するケースが多いでしょう。
ただ離婚したいからといってすぐに別居を決めるのはおすすめできません。
別居をするメリットとデメリットを理解し、別居すべきかどうかを判断することが大切です。
感情に任せて別居を始めてしまうと後悔することもありますから、冷静に考えた上で別居を実行するようにしましょう。
離婚前に離れて暮らすメリットとデメリット

ここでは離婚前に別居をするメリットとデメリットをくわしく紹介します。
別居を実行するかどうかの参考になさってください。
メリット
- 離婚が認められる理由(夫婦関係の破綻)になる
- 離婚についてお互い冷静に考えることができる
- 同居のストレスから解放される
- 離婚の準備を進めやすい
- 相手が早期の離婚に応じる可能性がある
- 婚姻費用を受け取ることができる
1.離婚が認められる理由(夫婦関係の破綻)になる
別居の事実や期間は離婚が認められるかどうかを判断する事情となります。
別居するということは離婚事由を作ることになるため、離婚したいとお考えの方にとってはメリットといえるでしょう。
2.離婚についてお互い冷静に考えることができる
別居すると一人の時間が増えるため、離婚について冷静に考えられます。
同居していると相手の嫌な部分ばかりが目につきますが、離れて暮らすことで相手の良い面や結婚生活を続けるメリットを見つけられる可能性もあります。
3.同居のストレスから解放される
別居すれば同居している時に感じるストレスから解放されます。
夫の言動や存在にストレスを感じている場合には、別居することで精神的に安定できる可能性が高いです。
4.離婚の準備を進めやすい
離婚を考えている場合には、準備が進めやすいというメリットがあります。
とくに離婚訴訟を行う上では、訴訟に関する資料や弁護士との打ち合わせなど相手に知られたくないことが多いですから別居している方が便利です。
5.相手が早く離婚に応じる可能性がある
別居すると離婚に対する意志の固さが伝わるからか、相手が早く離婚に応じる可能性があります。
なかなか離婚してくれないパートナー(旦那や妻)も婚姻費用を支払いたくないから、一人の生活が不便だから、などさまざまな理由から離婚に応じてくれるケースが少なくありません。
6.婚姻費用を受け取ることができる
別居しても婚姻関係は継続しているため婚姻費用を受け取ることができます。婚姻費用とは収入や社会的地位に応じた「社会生活を維持するために必要な生活費」のことで、衣食住や子供の養育にかかる費用、また医療費、教育費、交際費などが含まれます。
デメリット
- 夫婦関係の修復が難しくなる
- 浮気の証拠が手に入りづらくなる
- 相手から離婚請求される可能性がある
- 子供に負担がかかる可能性がある
- 財産を隠される恐れがある
1.夫婦関係の修復が難しくなる
別居すると夫婦関係の修復が難しくなる傾向があります。
厚生労働省の統計によると、別居から離婚に至る割合は7割もあるそうです。
一度家を出てしまったら戻れない可能性もありますから、夫婦関係の修復の見込みが残っている場合は別居を慎重に考えることをおすすめします。
2.浮気の証拠集めが難しくなる可能性がある
相手の浮気が原因で別居する場合、物理的な距離が生じるために相手の浮気の証拠集めが難しくなる可能性があります。
離婚請求できるだけの証拠が集まってから別居に踏み切るのが理想です。
別居後に浮気の証拠を集めたいからと相手の家に無断で入ると住居侵入罪にあたる恐れもあるため注意しましょう。
離婚請求のために証拠を集める場合は、費用はかかりますが探偵に依頼するなどの方法をとるのが安心です。
3.相手から離婚や慰謝料を請求される可能性がある
相手の同意なしに家を出て別居を始めてしまった場合には相手から離婚や慰謝料を請求される可能性があります。
これは夫婦には同居の義務があり、家を出る行為がその義務を怠る「悪意の遺棄」にあたるためです。
別居する場合は、相手に相談して同意を得てからにしましょう。
4.子供に負担がかかる可能性がある
別居することで子どもが転校しなければならないケースもあるでしょう。
あなたにとっては離婚したい相手でも子供にとっては大好きなお父さん(お母さん)ですから、別居するだけでも大きなショックを受けるはずです。
その上転校が重なれば子供の精神的苦痛はかなり大きくなると考えられます。
子供が転校しなくてもいい校区内、あるいは校区外でも通学可能かどうか学校に相談してみると良いでしょう。
5.財産を隠される恐れがある
離婚を視野に別居する場合、何も準備せずに家を出てしまうと財産を隠される恐れがあることを理解しておきましょう。
離婚する際には結婚後に得た財産を名義に関わらず半分受け取ることができますが、財産がいくらあるのか分からないと財産を受け取れない可能性もあるため、注意が必要です。
別居前に準備すべき5つのこと

離婚を見据えて別居を始める場合、準備しておくべきことがあります。
この準備をしていないと別居後に損失を被ったりトラブルにつながる可能性がありますから、注意が必要です。
離婚を有利に進めるためにも知っておきたいポイントがありますので、離婚や別居をお考えの方はぜひ参考になさってください。
①引っ越しや当面の生活費用を確保する
別居を検討されている場合、別居に踏み切る前に新居への引っ越しや当面の生活費を確保しておくことが大切です。
賃貸物件を借りる場合には家賃、また生活費に関してもすぐに仕事が見つからない場合に備えて数か月分準備しておきましょう。
実家に帰る、引っ越しは友達に頼む、というようにできるだけ出費を抑える方法をとることも大切です。
②相手の同意を得る(DVやモラハラが理由の場合は不要)
別居する際は相手の同意を得る必要があります。
一緒に住みたくないからといって無断で家を出てしまうと「同居義務違反」となり慰謝料を請求される恐れがありますので注意しましょう。
ただDVやモラハラが原因で別居する場合には相手の同意を得るのは危険ですから必要ありません。DVの被害を受けている場合はすぐに避難を考えましょう。モラハラが原因の場合は離婚請求時に備えて別居前に証拠を集めておくと安心です。
③別居期間や子供と会う頻度を決める
別居を始める際には別居期間や子供と会う頻度を相談の上で決めておくことが大切です。とくに相手が別居したがらないケースでは、半年なり1年なりの期間別居したい旨を伝えると同意してもらいやすい傾向があります。
また子供がいる家庭で親権をとりたい場合には、できるだけ子供を連れて家を出ることをおすすめします。
事情があって子供を連れて出て行くのが難しい場合は定期的に会う機会を設けるか電話やSNSなどの方法でコミュニケーションをとるようにしましょう。
子供を無断で連れ出したりすると「誘拐罪」に問われたり、子供の養育権をとる際に不利になったりする可能性がありますから、別居前に子どもとの面会の頻度などを明確にしておくことが大切です。
④転居届を提出する
別居後の郵便物をきちんと受け取るには転居届の提出が必要です。
転居届は郵便局に行くか、インターネットで申し込みができ、その後は別居前の住所に届く郵便物を届出日から1年間転送してくれます。
1年以上別居が継続する場合には更新が必要です。
⑤離婚届不受理申出書を提出しておく
別居前に「離婚届不受理申出書」を住民票のある役所に提出しましょう。
この書類は、配偶者があなたの同意を得ずに離婚届を提出しようとしても受理されないようにするものです。
離婚する際は、子供の親権者や財産分与などの離婚条件を事前に取り決めておかないとあなたにとって不利になる恐れがあります。
財産を隠されたり、子供の親権者を勝手に記入されたりといったケースもあり得ますので別居前には離婚届不受理申出書を必ず提出しましょう。
別居中の生活費について

別居を考えた時に心配になるのが生活費についてでしょう。
ここで覚悟しておかなければならないのが「別居前に比べて生活は苦しくなる」ということです。
実家に戻るにしても日々の生活にはお金がかかります。ここでは別居中の生活費を捻出する方法についてくわしく解説します。
仕事を探す
別居を考えた時、専業主婦の方は仕事を探さなければならなくなるでしょう。
仕事を探すにはハローワークに行ったり、インターネットで探したりといった方法がありますが、別居してから仕事を探すと気持ちに焦りが出てしまう恐れがあるため、できれば別居前に仕事を見つけておきましょう。
現在パートで仕事をしている方は、将来的に離婚を考えているなら正社員やフルタイムの仕事を探す必要があるかも知れません。
婚姻費用分担請求が可能
夫婦は、別居していても婚姻関係にある以上はお互いに助け合わなければいけません。そのため収入が低い側は収入が高い側に対して婚姻費用(生活費)を請求できます。
この婚姻費用の請求方法については、まず配偶者と話し合いましょう。
配偶者との間で同意が得られない場合は、家庭裁判所に調停を申立てます。
この婚姻費用の金額はそれぞれの収入や子供の数などにもよりますが、家庭裁判所が作成した算定表を元に計算されることが多いです。
婚姻費用の申し立てにはいくつか必要な書類(所得証明書・源泉徴収票・戸籍謄本など)があり、申し立ての手続きをした月から認められますから別居前に準備し、別居したらすぐ申し立てるようにしましょう。
ちなみに有責配偶者は婚姻費用分担の請求ができませんのでご注意ください。
不安がある方はNPO法人よつばにご相談ください

離婚を見据えての別居を考えてはいるものの、まだ別居を思いとどまるべきかお悩みの方はぜひ一度NPO法人よつばにご相談ください。
NPO法人よつばは専門カウンセラーが常駐する無料相談所で、どなたでもご利用頂けます。近くに相談できる友人や家族がいないという方や弁護士に相談したいけれど費用が心配という方など、たくさんの方にご利用頂いています。
夫婦関係の修復に関するアドバイスから信頼できる弁護士の紹介まで、どのようなご相談にも対応しておりますが、ただ話を聞いて欲しいという方も少なくありません。おひとりで悩みを抱え込んでいると心が疲れてしまいますよ。
ぜひお気軽にご相談ください。
記事まとめ

別居をする方の多くは離婚を視野に入れていらっしゃるかも知れません。
でもすぐに離婚を決めずに別居という選択をされたのであれば、まだ夫婦関係を修復することも可能なのではないでしょうか。
別居は婚姻関係が継続した状態で、冷静に今後の生活について考えることができる良い機会ともいえます。
別居期間を有意義に過ごすためにも、また将来的に離婚に至った場合に不利な状況に陥ることがないよう、ここで紹介したメリットとデメリットを考慮した上で事前準備をしっかり行いましょう。
何より大切なのは、後悔しない選択をすることです。自分自身の気持ちと向きあって答えを出しましょう。