国が設立した法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば、離婚相談を無料で受けられます
離婚を考えているけど、弁護士に相談するお金がない。そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
実は、国が設立した法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば、離婚相談を無料で受けられます。
ひとり親世帯なら、法的支援の費用返済が免除される新制度も始まりました。
しかし、法テラスの無料離婚相談には条件があり、知っておくべき注意点もあります。
この記事では、法テラスの無料離婚相談の仕組みや条件、そのメリットと注意点を徹底解説します。
法テラスの離婚相談の利用を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
法テラスの無料法律相談サービスとは
法テラスは、誰もが法的サービスにアクセスできるよう、国によって設立された組織です。その中核となるのが、無料法律相談と弁護士費用の立替制度です。
まず、無料法律相談。借金問題、離婚、相続、職場のトラブルなど、幅広い法律問題について、弁護士や司法書士に無料で相談できます。
離婚相談は1回30分、同一案件なら3回まで利用可能です。短時間ですが、問題の本質をしっかりと伝えてアドバイスをもらうことができれば、次のステップを明確にできます。
また法テラスでは無料離婚相談に加え、弁護士費用の立替制度も展開しています。
離婚問題は、数回の無料離婚相談だけでは解決しないケースが多いです。そんなとき、法テラスは弁護士・司法書士への依頼費用を立て替えてくれます。
立替金は、原則3年以内に月5,000円~10,000円程度で法テラスに返済する仕組みになっています。
法テラスの無料離婚相談や費用立替を利用できる人は?
法テラスの無料離婚相談や費用立替を利用する場合には、以下の条件を満たしている必要があります。
- 収入・資産基準を満たしていること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適していること
無料離婚相談のみなら1と3、離婚相談に加えて、法テラスでの費用立替を利用したい場合は1・2・3の全ての条件を満たしていればOKです。
以下では、法テラスの無料離婚相談の利用条件について詳しく解説していきます。
収入・資産基準を詳しく解説
法テラスの無料離婚相談を利用するには、収入と資産が一定基準以下である必要があります。
収入基準は、申込者と同居家族の手取り月収の合計が対象です。
1人世帯なら18万2,000円以下(東京や大阪など生活保護一級地では20万200円以下)、2人世帯なら25万1,000円以下(同27万6,100円以下)です。
さらに、家賃や住宅ローンを負担している場合、1人世帯で4万1,000円(同5万3,000円)、2人世帯で5万3,000円(同6万8,000円)まで加算できます。
資産基準は、現金や預貯金、不動産(自宅や係争物件を除く)、有価証券などの合計額で判断されます。
1人世帯なら180万円以下、2人世帯なら250万円以下です。
ただし、法テラスの無料離婚相談のみ利用する場合は、申込者の現金と預貯金のみが判断材料となります。
また、将来の医療費や教育費など、明確な出費予定がある場合は控除されることもあります。
勝訴の見込みと民事法律扶助の趣旨に適する
「勝訴の見込みがないとはいえないこと」と「民事法律扶助の趣旨に適うこと」も法テラスの無料離婚相談を利用する条件となります。
勝訴の見込みがないとはいえない
「勝訴の見込みがないとはいえない」とは、法律的に見て、相談者が何らかの利益を得られる可能性があるということです。
離婚問題の場合、「勝訴」は必ずしも離婚の成立を意味しません。
適切な養育費や慰謝料の獲得、公平な財産分与などの経済的利益も「勝訴」に含まれます。
したがって、離婚自体に争いがなくても、これらの問題で公平な結果を得られる見込みがあれば、法テラスの無料離婚相談を利用することができます。
民事法律扶助の趣旨に適う
「民事法律扶助の趣旨に適う」というのは、法テラスの利用が正当な権利の主張や利益の保護のためであることを意味します。
つまり、相手への嫌がらせや復讐、あるいは自分の利益だけを追求するような目的で法テラスの無料離婚相談は利用できません。
離婚相談で言えば、例えば「相手に慰謝料を払わせて困らせたい」といった動機は適しません。
しかし、「子供の将来のために適切な養育費を確保したい」といった動機は趣旨に適うでしょう。
令和6年4月から「ひとり親世帯の償還免除制度」がスタート
先述した通り、法テラスで支援を受けた方は後で費用(立替金)を返済する必要がありますが、「ひとり親世帯の償還免除制度」では、ひとり親の方々が一定の条件を満たせば、その返済が免除されます。
つまり、離婚後の法的問題に取り組む際の経済的負担が大幅に軽減されるのです。
法テラスのひとり親世帯の償還免除制度の利用条件
この制度は、次の条件を全て満たすひとり親の方が対象です。
- 養育費請求を行った方:離婚後の子どもの生活のために、元配偶者に養育費を請求した方。
- 婚姻関係がない方:離婚した方や、未婚のシングルマザー・ファザーなど。
- 子どもと同居&扶養:義務教育年齢(中学生まで)の子どもと一緒に住み、面倒を見ている方。
- 収入・資産が基準以下:家族構成や居住地によって異なりますが、例えば、東京都特別区の1人親子世帯なら月収約14万円以下。
離婚関連の法的手続きが対象に
対象となるのは、同じ相手(元配偶者など)に対する次のような手続きです。
- 養育費請求や増減額請求
- 離婚や財産分与、慰謝料の請求
- 親権者変更の申立て
- 面会交流(子どもとの面会)の請求
- DV保護命令の申立て
これらの手続きに関する法テラスの立替金が、新制度で免除の対象になります。
養育費も考慮された制度設計
注目すべきは、毎月の養育費(上限5万円)が収入基準の対象外になることです。
つまり、養育費をしっかり請求して受け取ることで、子どもの生活を支えつつ、この制度の利用資格も維持しやすくなります。
申請のタイミングは?
全ての法的手続きが終了してから申請します。申請から半年以上経って条件を満たしていれば、立替金の返済が免除されます。
離婚後のひとり親生活は決して楽ではありません。
しかし、この新制度により、養育費請求や親権問題など、子どものために必要な法的手続きに踏み出しやすくなります。
経済的な不安を少し和らげ、新しい一歩を踏み出す勇気を与えてくれる制度です。ぜひ詳細を確認し、利用を検討してみてください。
参考:ひとり親世帯の償還免除制度について
法テラスでは適切な相談窓口を無料で紹介してくれる
離婚問題は法律だけでなく、生活や心理など多岐にわたります。法テラスは、単なる離婚相談窓口ではなく、あなたの問題に合った支援先を無料で紹介してくれます。
専門家による的確なアドバイス
まず、法テラスのスタッフが丁寧にあなたの状況を聞き取ります。
離婚の理由、子どもの有無、DV被害の有無など、個別の事情を踏まえて、最適な支援先を判断します。
弁護士以外の支援窓口も
離婚には弁護士相談が重要ですが、それだけでは解決できない問題もあります。法テラスは以下のような窓口も紹介します。
- 福祉事務所:生活保護や児童扶養手当など、経済的支援の相談。
- 児童相談所:子どもの養育や心のケアに関する相談。
- DV支援センター:DVから身を守る方法や、シェルター入所の相談。
- カウンセリング機関:離婚に伴う心の問題や子どもの心のケア。
- ハローワーク:離婚後の就職や転職の相談。
ワンストップ窓口としての機能
様々な問題が絡み合う離婚問題。一つ一つの窓口を自分で探すのは大変です。
法テラスは、あなたの状況に合わせて適切な窓口を紹介。一か所で多角的な支援が受けられるのです。
地域の支援団体も
法テラスは、大手の機関だけでなく、あなたの地域の小さな支援団体も無料で紹介してくれます。
同じ境遇の人々が集まる自助グループや、地元の無料法律相談会など、きめ細かな情報を受け取ることができるでしょう。
離婚相談を利用する際の注意点
ここまで、法テラスの離婚相談の特徴やメリットについて紹介してきましたが、もちろん注意点やデメリットも存在します。
しかし、あらかじめデメリットや注意点を知っておけば、離婚相談をうまく利用することができるはずです。
ここでは、法テラスの離婚相談を使用する際の注意点と、その対策について紹介していきます。
弁護士選択の制限と対策
通常、法テラスが紹介する弁護士の中から選ぶことになり、知人推薦の弁護士や評判の良い弁護士を自由に選べるわけではありません。
これは、法テラスが公平性を保ち、かつ弁護士の質を一定水準以上に保つためです。
しかし、法テラスに登録している弁護士は、研修を受け、一定の経験を積んだ人ばかりです。離婚相談に関しても、専門性の高い弁護士が多く登録しています。
また、法テラスは弁護士の実績や専門分野を把握しているので、あなたの状況に最適な弁護士を紹介してくれます。
例えば、DV被害がある場合はDV事案に強い弁護士、国際結婚の場合は国際法に詳しい弁護士など、離婚相談の内容に応じた紹介が可能です。
さらに、最初に紹介された弁護士との相性が良くない場合は、遠慮せずに法テラスに伝えましょう。
法テラスは利用者の満足度を重視しており、別の弁護士の紹介を検討してくれます。
また事前に「女性弁護士を希望」など、法テラスに要望を伝えることもできます。
制限はありますが、法テラスのサポートを利用すれば、質の高い適切な弁護士に巡り会える可能性が高いのです。
無料相談の回数と時間制限
法テラスの無料離婚相談には、回数と時間に制限があります。基本的に、同じ問題について30分の無料相談が3回限りです。
離婚相談は複雑なケースが多いため、1時間半では物足りないと感じるかもしれません。
また、状況が変わるたびに法テラスに相談したくなるものですが、制限なしに無料で離婚相談ができるというわけにはいきません。
しかし、この制限は法テラスの限られたリソースを有効活用し、より多くの人に法的アドバイスを提供するためのものです。
1時間半の無料離婚相談で、あなたの問題の概要を弁護士が把握し、次のステップのアドバイスをしてくれます。
例えば、「調停を申し立てるべき」「DVについて警察に相談を」など、具体的に行動すべきことがわかるはずです。
また、状況が大きく変わった場合(例:新たなDV被害、養育費の滞納など)は、法テラスに相談してみてください。
新たな法的問題と判断されれば、再度の離婚相談が無料になる可能性もあります。回数と時間に制限はありますが、うまく利用すれば十分な支援が得られるはずです。
審査期間と緊急時の対応策
先述した通り、法テラスの無料離婚相談や弁護士費用の立て替え支援を受けるには、収入や資産などの審査があります。
法テラスの審査には通常、申込みから援助開始まで2〜3週間かかります。
離婚相談は時間との戦いになることも多く、この待機期間が不安に感じるかもしれません。
特に、DVなど緊急性の高い問題を抱えている場合、2〜3週間は長すぎると感じるでしょう。
しかし、法テラスが緊急性が高いと判断した場合は「緊急避難措置」として、審査前に離婚相談や弁護士依頼が可能になります。
例えば、DVによる身体的危険がある、子どもの連れ去りの恐れがある、重要な期限が迫っている(調停申立期限など)といったケースです。
まずは法テラスに電話で状況を説明し、緊急性を訴えましょう。
また、審査中でも法テラスの無料離婚相談は利用できます。
離婚相談で弁護士からDVシェルターの利用方法や、警察への通報の仕方など、自分で取れる緊急措置のアドバイスを得ることができます。
さらに、自治体やDV支援センターなど、法テラス以外の緊急支援窓口も紹介してくれます。
審査に時間がかかるのは、公平性を保ち、本当に支援が必要な人に確実に届けるためです。しかし、緊急時には柔軟な対応も用意されています。
状況を正確に伝え、必要に応じて法テラスに「緊急避難措置」を申し出ること。そして、審査中も無料相談や他の支援窓口を利用すること。
これらの対策を知っておけば、審査期間中も安心して前に進めるはずです。
初回の離婚相談前に準備すべきこと
上記の通り、法テラスの無料相談は1回30分までが3回と限られています。
この貴重な時間を最大限に利用し、離婚問題の解決への第一歩を踏み出すには、事前の準備と適切な心構えが不可欠です。
ここでは、法テラスでの初回離婚相談を成功させるための具体的な準備と、離婚相談時の心構えについてお話しします。
1. 事実関係の整理
まず、離婚に至る経緯や現在の状況を時系列で整理しましょう。
「いつ」「どこで」「何が」あったのかを箇条書きにします。感情的な部分は一旦置いて、客観的な事実を中心に。
特に以下の点は詳しくメモしておきます。
- 結婚・別居・離婚協議の日付
- DVや浮気の具体的なエピソード(日時、場所、内容)
- 子どもの年齢、学年、現在の監護状況
- 夫婦それぞれの収入、共有財産(家、車、貯金など)
事実を整理することで、離婚相談の限られた時間内に弁護士に状況を的確に伝えられます。
2. 質問リストの作成
次に、弁護士に聞きたいことをリストアップします。
離婚問題は法律、生活、子育てなど多岐にわたります。離婚相談前に、以下のような質問を優先順位をつけてまとめておきましょう。
- 離婚の方法(協議離婚か調停か裁判か)
- 養育費や慰謝料の相場
- 面会交流の取り決め方
- DV被害時の法的対応
- 財産分与の計算方法
優先順位の高い質問から聞くことで、離婚相談の時間を有効活用できます。
3. 関連書類の準備
可能な限り、関連書類を用意しましょう。
離婚相談の中で全てを見せたり、話したりする必要はありませんが、要点を説明する際に役に立つはずです。
- 婚姻届や住民票(結婚・別居の日付確認)
- 給与明細や確定申告書(収入の証明)
- 通帳のコピー(共有財産の把握)
- DVの証拠(診断書、写真、LINEのスクショなど)
書類があることで、弁護士の助言がより具体的かつ正確になります。
法テラスに離婚相談をする際の心構え
離婚相談の準備ができたら、次は心構えです。
正直に話す
自分にとって恥ずかしいことや不利になりそうなことも、隠さず話すことをおすすめします。
弁護士は全体像を把握して初めて、最善のアドバイスができます。法テラスには守秘義務があるので、安心して話してみてください。
メモを取る
離婚相談の場は貴重です。弁護士の助言の要点はメモしましょう。
離婚相談を進めていく中で、聞き漏らしたことや理解できなかった点は、遠慮せずにその場で質問してみてください。
次のステップを確認
限られた離婚相談の時間の中で全てが解決するわけではありません。
離婚相談の最後に、「次は何をすべきか」を必ず確認しましょう。法テラスの立替制度利用の可否や、次回の離婚相談の必要性なども聞いておきます。
希望を持つ
離婚問題は長期戦になることも。しかし、法テラスの離婚相談を利用する時点で、あなたは正しい一歩を踏み出しています。
あなたは一人ではありません。希望を持って離婚相談に臨みましょう。
まとめ
法テラスの無料離婚相談は、離婚問題を抱える方々の強い味方です。
収入・資産基準や離婚相談時間の制限など、法テラスの無料離婚相談には条件や注意点もありますが、それを理解した上で利用すれば、専門家のアドバイスを無料で得ることができます。
事前準備をしっかりとした上で、冷静に、そして正直に離婚相談をすることがポイントです。
法テラスは単なる離婚相談窓口ではありません。あなたの状況に合わせて、福祉やDV支援など、多角的な支援先も紹介してくれます。
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