子供のいる夫婦が離婚する場合、親権をどちらが持つかで揉めるケースも少なくない
子供のいる夫婦が離婚する場合、夫か妻のどちらかが親権を持ちます。
配偶者への愛情はなくなっても子供への愛情は変わらないものですから、親権をどちらが持つかで揉めるケースも少なくありません。
離婚後の子供の親権者はどのように決められるのでしょうか。
この記事では子供の親権を得るための7つのポイントを親権者の決め方や変更方法などを交えてくわしく解説します。
親権とは
親権とは未成年の子供が成人するまで養育するための一切の権利または義務のことで、常に子供の利益のために行使されるものです。
夫婦が婚姻関係にある間の親権は夫婦両方に認められています(共同親権)が、離婚するとどちらか一方が親権を持つことになります。
旦那と妻という関係でなくても子供の父親、母親である事実は変わりありませんが、親権を取れなかった親は子供に自由に会うことが難しくなるため親権者を決めるのは時間がかかることも少なくありません。
親権は子供が何歳まで有効?
民法の規定によれば親権は子供が成人するまで有効です。つまり現在の成年年齢である18歳になるまで親権が行使されます。
親権は子供が成人すれば消滅します。
親権の具体的な内容
親権は大きく分けると下記の2つの権利で構成されます。
身上監護権には子供の居所を定める居所指定権や子供が悪いことをした時に叱ったり罰することができる懲戒権、法律行為を代理で行う法定代理権、仕事に就くことを許可する職業許可権も含まれます。
これらの権利はどれも子供の利益のために行使されなければいけません。
財産管理権 | 子供の財産を管理すること |
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身上監護権 | 子供を育て教育、躾すること |
離婚時の親権者の決め方
親権者の決め方は離婚時の状況により異なりますが、どちらの親が親権者になった方が子供に利益があり、また幸せなのかが重要なポイントです。
ここではそれぞれの状況ごとに親権者の決め方の流れを解説します。
協議離婚の場合
協議離婚の場合、夫婦の間で相談し合ってどちらが親権を持つかを決めます。
子供がいる夫婦が離婚届けを提出する際には、親権者の欄に記入がないと離婚届が受理されません。(戸籍法76条1号)
協議によって親権者が決まらない時は、調停、裁判により親権者が決まることになります。
調停離婚の場合
夫婦間での話し合い(協議)で親権者が決まらない場合の次のステップが家庭裁判所に申し立てて行われる「調停」です。
調停では家庭裁判所の調停委員を交え、子供の幸せを第一に考えるとどちらが親権を持つべきなのかが話し合われます。
親権が争いになるケースにおいては、調査官が参加して監護状況などについて専門的な調査を行うこともあります。
調査結果を元に調停委員は助言や説得を行い合意を目指しますが、親権者が決まらない場合には調停不成立となり、裁判(訴訟)に移行します。
裁判離婚の場合
離婚裁判では当事者双方の主張や証拠を裁判官が精査し、判決という形で親権者が決まります。
判決が不服であれば上告も可能ですが、裁判が長引けば当事者はもちろん、子供の精神的負担が大きくなるため、子供の幸せを第一に考えて話し合いで親権者を決めるのが望ましいです。
離婚後に変更する方法
離婚後に親権を変更することは大変難しいです。
離婚時には親権者を父親か母親のどちらにするかを自由に決めることができますが、離婚後に親権を変更するには家庭裁判所に行き「親権者変更調停」の申し立て手続きを行わなければなりません。
離婚時に「〇歳になったら親権を変更しましょう」と夫婦間で話し合っていたとしても、一度指定した親権を自由に変更することはできないのです。
親権者変更調停を申立てる
親権者変更調停を申立てる場合には、変更の理由として「子の利益のために必要」で、「親権者指定時から事情が変わっている」ことが求められます。
また当事者(父親、母親)双方が納得しているだけでは親権者の変更は認められません。これは親権者の変更に伴う環境の変化が子供の精神的負担になるという理由からです。
離婚後に調停で親権者を変更するのはハードルが高いため、離婚時にしっかり親権を獲得するようにしましょう。
親権者変更調停に必要な書類
- 親権者変更調停申立書
- 標準的な申立添付書類
- 申立人の戸籍謄本
- 相手方の戸籍謄本
- 未成年の子どもの戸籍謄本
離婚時に親権を獲得するための7つのポイント
ここでは離婚後子供の親権を獲得するための7つのポイントを紹介します。
離婚の際、調停や裁判で子供の親権者を決めるにあたっては、重要視されるいくつかの条件や判断基準があります。
協議離婚で配偶者の同意が得られるのが望ましいことですが、万が一調停や裁判に発展した場合に備えておけば対策も立てられるので安心です。
ご自分の状況と照らし合わせて確認してみましょう。
①子供への愛情の深さ
子供への愛情の深さは親権者を決める際の重要なポイントです。
これまでどれだけの時間を子供と過ごしてきたか、子供との関係性や精神的な結びつきの強さなどが判断基準となるため、普段子供との時間がとりにくい父親は不利だといわれています。
②心身ともに健康かどうか
親権者は子供の日常的な世話が可能な健康状態であることが求められます。
持病があってはいけない、ということではありませんが、十分に子供の世話ができない場合は親権者として適任ではないと判断される可能性が高いです。
離婚の際、親権を巡って調停や裁判に発展しそうな場合は、医師の診断書をもらっておくと良いでしょう。
③生活環境
離婚後の生活環境も親権者を決める際の重要なポイントです。
とくに子供が幼いケースでは、子供との時間が取りやすい方が親権者として望ましいと判断される傾向があります。
近所に両親が住んでいるなど、親権者が子供と一緒にいられない時にサポートしてもらえる環境が整っているかどうかも考慮されるポイントのひとつです。
④経済状況の安定
経済状況が安定しているかどうかも親権者を決める重要なポイントです。
離婚後、ひとりで子供を育てるのはお金がかかりますから、定職がない方や預貯金が全くない方は離婚調停や離婚裁判で不利になるかも知れません。
ただ収入が低い場合でも、離婚後は養育費でカバーできることからそこまで重要視されないという意見もあります。
⑤子供の意思
子供が15歳以上の場合、家庭裁判所は子供の意思を確認しなければならないと法律上定められており、親権者を決めるにあたって重要な相当程度尊重されます。そのため、裁判官や調査官が子供に意思確認を行うこともあります。
⑥兄弟不分離の原則
兄弟不分離の原則とは、子供が複数いる夫婦が離婚する場合に兄弟を分離せず同一の親権者が子供を養育するべきという考え方のことです。
これは「一緒に育ってきた兄弟を分離すると悪影響が生じる恐れがあるため、同年代の兄弟姉妹は一緒に育つ方が精神衛生上良い」とされているためです。
ただし子供が15歳以上で兄弟姉妹と離れて暮らす意思を持っているなど一定の条件を満たしているケースでは兄弟姉妹の分離が認められます。
⑦母性優先の原則
母性優先の原則とは、子供の成育上母親の元で暮らすのが望ましいことから、母親を優先して親権者に選ぶという考え方のことです。
とくに子供が乳幼児や年少の場合にこの原則が重視されるため、母親が親権者になる傾向があり有利だとされています。
浮気や借金などで家庭を破綻させたことが理由で離婚に至った場合でも親権には影響がありません。
ただし母親が健康上の理由やギャンブル依存症で子供を監護できる状態でない場合、また婚姻中から父親が主に子供の監護を行っていた場合には、父親が親権を獲得する可能性があります。
父親は親権を取りにくい?
一般的に離婚後の子供の親権は母親がとることが多く、最高裁判所の統計でも「母親が親権をとる割合は9割」とされています。
では父親が親権を獲得できるのはどのようなケースなのでしょうか。
ここでは離婚後に父親が子供の親権を獲得するためのポイントとよくある質問についてくわしく解説します。
父親が親権者となるためのポイント
離婚の際、父親が子供の親権者となるために有利な状況になるポイントを紹介します。
①離婚後の経済状況の安定を主張する
子供の養育にはお金がかかるため、離婚後も経済状況が変わらず安定している父親が有利です。
収入が安定していれば子供が将来の選択を行う際に経済的な理由で諦めなければならない状況を避けられますから、調停や裁判でその点を主張しましょう。
②養育実績の証拠を準備する
親権者を決める際の離婚調停や離婚裁判では過去の養育実績が重視されます。
これは養育実績のある親は今後も子供と関わっていくと判断できるためです。
子供の日々の世話や病気の時の看病の状況、学校行事への参加などで子供とどれ位関わってきたか、また食事や洗濯などの家事など家庭との関わり方について分かるもの(写真や日記など)を準備しておきましょう。
③養育時間が確保できる環境を整える
離婚後に子供の親権者になるには、養育時間が確保できるかどうかがひとつの判断材料になります。
そのため仕事の時間を調整できる、また両親などのサポートが受けられるなど子供を養育できる環境が整っていれば離婚調停や離婚裁判でも親権が獲得できる可能性が高くなるでしょう。
④心身ともに健康であること
子供が成人するまで養育するためには、親権者は心身ともに健康な状態であることが重視されます。子育てには体力が必要ですし、離婚して単独の親権者になれば生活がガラリと変わりますから相当の体力が必要です。
離婚調停や離婚裁判に備え、健康に問題がない旨の医師の診断書を準備しておくと良いでしょう。
親権を取れなかった場合
親権を取れなかった場合には、定期的に子供との面会交流を行いましょう。
離婚後分かれて暮らすようになっても子供との関係が切れるわけではありません。父親(母親)との関係を良好に保つことは子供の健全な成長に必要です。
離婚後の面会交流の頻度は月に一回というケースが多いですが、夫婦で話し合って決めるようにしましょう。
母親が獲得できないケース
母親は親権を獲得しやすいとされていますが、次のようなケースでは母親が親権者に選ばれない可能性があります。
- DVやモラハラなど、子供を虐待していた場合
- 主な監護者が母親でなかった場合
- 別居後の監護者が父親だった場合
- 母親が重度の精神疾患を患っている場合
- 子供が父親を親権者に選んだ場合
1.子供を虐待していた場合
母親が暴力や暴言などで子供を虐待していた場合、母親は親権者に相応しくないとして親権が獲得できない可能性があります。
ただ母親が自覚がないケースや子供が母親に嫌われたくない気持ちから事実を認めないケースも少なくありません。
虐待の事実を示す証拠がないと証明が難しいため、客観的な証拠を準備する必要があります。
2.主な監護者が母親でなかった場合
元々子供の監護を母親以外の者が担っていた場合には、母親が親権者に選ばれないケースも少なからずあります。
母性優先の原則は母親だから優先されるというものではありません。
子供の養育を行う者が母親以外の場合には、母親の監護実績が認められず親権が獲得できない可能性があります。
3.別居後の監護者が父親だった場合
別居後の監護者が父親だった場合、母親が親権者に指定されない可能性があります。父親が子育てに積極的で監護の大部分を父親が行っていたのであれば、父親が親権者となる可能性は高くなるでしょう。
4.母親が重度の精神疾患を患っている場合
母親が重度の精神疾患を患っている場合には、子供の監護能力に問題があると認められ親権が取れない可能性があります。
この場合の精神疾患とは回復の見込みが低く長期の入院を必要とするようなもので、最低限の育児や家事ができるケースは当てはまりません。
5.子供が父親を親権者に選んだ場合
子供が父親を親権者に選んだ場合、母親が親権を取れない可能性があります。
離婚する夫婦の子供が15歳以上の場合、家庭裁判所は必ず子供の意思を確認しなければなりません。
その際、子供が母親との同居を希望しないということであれば、その気持ちが尊重される可能性が高いでしょう。
専業主婦でも親権は取れる?
無職でも専業主婦でも親権を取れるケースは少なくありません。
親権者の決め方として「過去の養育実績」と「今後の養育環境」が重視されるので、これらの条件が満たされていれば可能性は十分あります。
ただ別居した場合に受け取れる婚姻費用と違って養育費はあくまでも「子供を養育するためのお金」ですから、離婚後に経済的に困ることがないよう仕事を探しておくと安心です。
記事まとめ
離婚の際、子供の親権を取るための7つのポイントを紹介しました。
夫婦でなくなっても子供にとっては大好きな父親と母親ですから、離婚後もできるだけ良い関係を保ちたいものです。
そのためにも調停や裁判で長期に渡って親権を争うのではなく、子供の親権者として相応しいと判断されるよう準備しましょう。
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